コラム ホモロー 第4回:ネジの話

2018.07.13

京都は祇園祭も間もなくですね。

いよいよ息するのもしんどなる蒸し暑い京都特有の夏がやって来ます。

皆様いかがお過ごしですか? 早くも夏バテになってませんか?

家帰ってよ~冷えた1本目1口目が1日の中で唯一の楽しみで生きてる、年中バテてる老いたヲタのオッさん、ボードウォークのホモローです。

SPOTの編集のお方に「何かお題貰えます?」ってお願いしたら「スケボーパーツについてお願い出来ます?」てお題を頂いたんで、ミッションに従って今回はスケボーのパーツについて誰が読んでるのか、マジで分かりませんが何か書いてみたろか思います。

存在感薄めのパーツですが、いろいろあったんです・・・。

さて本題。

編集の方にお願いされたお題ですが、僕、万年反抗期永遠の16歳のアラフォーなんで、当たり前に天の邪鬼なとこ出てしもて今回取り上げるのは”ネジ”にします(笑)

ここ京都では単にネジと言う事が多いですが、要はスケボーデッキとトラックを留めておくソレです。

欧米ではビスにボルトやハードウェアーとか言うんでしょうか?

全てのパーツが合わさってスケボーとしての体を成すので必要でないパーツは

無いとは思いますが他のパーツに比べて存在感薄目、ジョンやポールにリンゴよりかはジョージ的存在感すらするネジ。

しかし僕のスケボー歴の中でもこのネジにもちゃんと変化があったと記憶しています。

 

僕がスケボーを始めた頃、このネジはスケボー屋さんに言われるがまま。

今の様に8本づつパッケージに入れられる事も少なく、各ショップ様の道具箱に乱雑に入れられていて、僕がガキだったんで知らないだけだったかも知れませんが特にコッチも気にする事無くデッキとトラックがキッチリ留まれば良いって扱いだったと思います。

当時は六角のネジは無くプラスドライバーで留めるのが主流だった上に、お金も無いのでデッキを替えてもネジまではお小遣いが行き届く事もなく、数年スパンで使う事もざら。使えば使う程十字部分(頭部)とドライバーのサイズが合ってないと”ナメ”てしまう事も。

こ~なってしまうとデッキからトラックを取り外す事が困難になってしまい、新しいデッキはあるのに古いデッキからトラックを外す事が出来ず、早よ滑りに行きたいのにペンチで必死で押さえてトラックを取らないといけない事変が勃発する事も多々。

 

spotskateboarding

今はなき、コの字の”ブリッジボルト”

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ソコに救世主で現れた近未来のネジが”ブリッジボルト”

詳細は写真をご覧頂けましたらお分かり頂けますが、コの字型のボルトをデッキテープ側からハメこむと、トラック側のをボルトを締めるだけでトラック取付け作業が完了。

ネジ山がナメる心配もない画期的なアイテム。

当時高校生ぐらいだった僕。スケボーを初めて何年か経ってましたが、ネジにゾッコンになったのはグラインドキング社から発売されていた、このブリッジボルトが初体験。

結構なお値段していた記憶がありますが、周りの友達も皆コレを搭載するのがトレンドだったのが、いつしかスタンダードに。

ただ当時はまだ未熟だったであろうスケボー業界。

そんなにテストもせず商品化したのか?ボトム側の左右のボルトを恐ろしく正確に、均等に締めないと金属疲労ですぐに折れてしまう事変が大量勃発。

更に空前のワンフット(オーリーをし空中で片足を抜き出すトリック)ブームで、デッキテープ側のブリッジボルトの出っ張りが引っかかって「(足が)抜けへん」て自分らの練習不足を差し置いて、僕らの周りではささやかれはじめ……。

 

spotskateboarding

 

逆にオーリー練習中の年下の子に「(出っ張りで)オーリー足が引っかかるで?」て、言葉巧みに誘い込み中古のブリッジボルトを数百円で売りつけるといった、目を覆いたくなるような凄惨な事件も同時に大量勃発。

ただ、年下の子達もそりゃ同じように折れてしまう上に、年上にあたる僕らは徐々に元のプラスネジに戻っていたので、大して上手くも無いクソ年上にダマされたと気付くのに時間がかかる事もなく、あんなけ夢中になって探しまくって買ってたのに、ここ京都では数年でブリッジボルトは何処かへ消えてしまいました。

ブリッジボルトブームの煽りを受けてか数年間あまり売れて無かったのか、ショップの道具箱の中でサビが回った状態で放置されていたプラスネジ。

まさか今現在その店をやってるとは当時の僕は思いもしてませんでしたが、サーフィンがメインだった当時のボードウォークでは万引きせんとええ子に

デッキ買ったら道具箱の中のサビたネジに限っては持って帰ってええルールが設けられて、昔の様に”ナメ”事変に苦しまされる事も無く安定してネジの供給はされていました。

これでジョージ的存在のネジは安泰した平和な生活を送れるはずだったのですが…

運命は悪戯な物でそれでは許してくれませんでした。

そういえばトラックに6つ穴があった・・・。

時は90年代初頭。

先程出たワンフットオーリー等の空中系トリックで、レイトフリップに代表されるデッキに難解な回転をかけるトリックブームが、行くとこまで行き着いた感が出始めて、お次は花壇や縁石、レールなど要は角のある人工物にデッキを乗せて滑らせるスライド系トリックのブームが劇襲。

穴があったら入りたい、角があったら塗りたい。と、何も出来ないのに僕らは角をみかけたらWAXを塗りたぐってはデッキをスライドさせ、傷をつけるのが男の勲章とされる、激動の混沌期に突入しました。

ココでひっそり生活していた筈のネジさんの平和な生活を脅かすある事件が起きます。

当時は特殊加工デッキ等もあり印象的には今のデッキより頑丈だったので、スライドトリックでデッキには荒くれた傷が付くことで僕らはご満悦でしたが、実はスライド系のトリックの衝撃がモロにネジに響く結果に。

今回はネジの話なので割愛しますがそのような故障を受けて外側のネジが角に当たらない様に工夫し、ネジ穴を内側に移動させ、6箇所穴が開けられた

6ホールトラックがヴェンチャー社より早々に発売されトラック側だけに関しては、割りかし早い段階で対処がとられたのですが……

 

 

問題はネジ。

当時ボードウォークでタダでゲット出来たサビたネジは、ライザーパット(ウィールとデッキの干渉を防ぐ為にデッキとトラックの間に入れるプラスチック製のかまし)を標準で入れる80年代の古いネジだったので呼び長さがおそらく5cm位。

ライザーパットなしでデッキにトラックを取付けるとネジ部が数cm出てしまうので、トラックに改良がなされても結局、縁石などの角にデッキを乗せると、引っかかって物凄く不快な金属音がして滑らせにくいし、トラック側のはみ出たネジ部とネジ先がボロっボロっになってしまって、今までデッキテープ側の頭部で泣かされていたのが、真反対側の故障でまたトラックが取れない事変が勃発。

それでも角があったら塗って意地で無理矢理スライド系トリックを繰り返すと、いつの間にか不要なネジ部だけ折れて具合の良い、短いネジが完成!!

ただ、コレは上手い人達の話で僕らみたいなペーペーが8本同時に、コッチの意のままキレイにネジ部だけ折れる事も無く、新しいデッキをゲットしてトラックをデッキに装着したら、鉄ノコを借りて不要なネジ部分を切り取るっちゅう今までの作業工程でダントツ1番めんどくさい行程が加わってしまいました。

更に雑に切っていたのでトラックを取ろうと思ったらまた取れない事や、鉄ノコの雑な使い方のせいでトラック自体に嫌~な傷入れてしまうことも多々。

トラックなんて2年に1回、お年玉で買えたら良いほうなのに、細かい長いネジのせいで結果、明るい健やかなはずの思春期の心に暗い影を落とす結果に。

ショーティーズってブランド名の由来を知ってますか?

そんなとき、算数なんて恐らくフ@ックだったであろう世界中のキッズスケーター達に、難解な分数が記載されたアイテムが投下。

その分数とは…7/8。

5/8チップスはたまに食ってたけど、ハチブンのナナとは何ぞや?

チープなビニール袋に詰め込まれて手頃な価格のこのアイテムこそが

1インチ(約2.56cm)のネジを7/8インチ(約2.24cm)まで短く切っただけのネジ。

 

 

ブリッジボルトの過去もあるのでそんな信用してなかったものの、お小遣いでも買えるので冷やかしで1パック購入。

そんな期待感も無くデッキに挿入。ボルトをつけて、ドライバーを1回転、2回転…「ん?もう留まった?」

今まで手首痛くなるまで何回転もドライバーを回していたのに、回転数の少なさでまず驚き、何よりもトラック側にネジ部が一切出る事なくマジでピッタリ。

いやいや、こんなお手軽にアホみたいにただネジ短く切っただけのもん、スケボーで使ったらすぐ取れてまうやろ……となかなか暗い影を払拭できない僕をあざ笑うかのように、ボルト部分は潰れないしトラックが緩む事も無し。

ホンマにアホみたいな事ですが一寸した発想の転換。

ユーザーが求めていた物事をシンプルに受け止めただけのこの商品は空前の大ヒット。

ただの短いネジだけで恐らく巨万の富を得たぽいこの会社はドンドン大きくなり、ホームレス同然の生活からスケボーと2本の足だけでメイプル社からサポートを受け、そしてトイマシーンに移籍し当時キッズスケーターの憧れの存在、スーパースターのチャド•マスカさんをメインライダーとして受け入れ、現スケートマフィア在籍のブランドン•ターナーさん、ヤンチャ過ぎて何してはるかよ~分かりませんが今でも抜群のやんちゃオーラとスター性を感じるピーター•スモリックさん等、当時のスケートシーンでビンビンに元気でやんちゃスケーター達でライダー構成し、デッキカンパニーとしても一世代を築き上げます。

ただの”短い”ネジからスタートし、スケボー史にその名を燦然(さんぜん)と残す、ブランドにまでなったそいつの名は、短いネジが由来の”ショーティーズ”。

 

 

2000年当時、このショーティーズの卸会社様にお世話になっていて、この写真撮影前日に、来日していた彼らと一緒に居たのですが、当時サーカのライダーだったマスカさんはナイキ、オサイラスのライダーだったブランドンさんはDCshoes、同じくオサイラスだったスモリックさんは、クラークスか、もしかしたらサーカ履いてて。こいつら契約的に大丈夫なんかいな?と思ってたのですが……。

やっぱり当たり前に後から物凄い怒られたらしいです。

そんな写真の左の3人だけ見てもチームライダーのやんちゃさがビンビンに伝わる広告写真ですね。

ちなみに写真では分かりにくいですが、マスカのナイキのシューズは合成でサーカのマークに差し替えられています。

おっと、脱線しましたが現在、同ブランドの活動は現在少々おとなしくなっている様に感じますが、恐らく若い皆様は7/8インチのネジに対して僕が小さい時にそうであった様に「デッキとトラックがとまってたらええ」ぐらいの扱いだったんじゃありません?

実はその7/8インチというなんてないサイズ、そしてジョージ的な存在感薄目のパーツにも紆余曲折の結果、現在に至るのです。

他にもこのショーティーズの広告のイメージキャラにROSAって超エロいモデルさんがいっつも出てて

 

 

桜木ルイでは醸し出せない欧米女性の豊満なボディにメロメロなったり、打ち込み式のネジとかエクスペディションワンからはデッキ本体内部に、最初からボルトが埋め込まれているデッキもありましたし、4本のネジで留めずに3本のネジでトラックを留めたら3回デッキ替えたら

余ったネジで1回無料でトラック留めれる貧乏性が癖付いてしもてる僕が今もココに居ますし、色付きネジに、シグネーチャーネジも今は出てますし、まっだまっだネジだけでいや、ROSAだけで今コラムの56倍はかけますけど、そんなコラム誰も読まないだろし……。

今回の頭のネジが飛んでるコラムはココらにしましょうか~お後がよろしいようで。

ほな お~きに。

 

【プロフィール】

荒川雄介 Yusuke Arakawa

1976年1月18日生まれ。長年、京都のローカルシーンを牽引してきたSUN FLOWERのライダーであり、BOARD WALK SPORTS KYOTOの店長。豊富なスケートの知識で、数多くのスケートビデオの制作にも携わっている。

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