スケートボードと[ジャッジ]

2020.03.11

Spot skateboardingをご覧の皆様、こんにちわ。

第1話、「スケートボードと嫁」はいかがでしたでしょうか?

共感して、笑って、参考にしていただけましたら幸いです。

きっと、同年代や子供のいるスケーターには割と響いたんじゃないかなぁと思ってます。笑

 

さて第2話ですが、今回は打って変わって「スケートボードのコンテストとジャッジについて」というまじめな話をしたいと思います。

いや、第1話も真剣でしたよ。

なんせあの話を書くことによって私は嫁さんから何を言われるか分からないので、

ハンドレール入るときばりの覚悟を持ってエントリーしたってことだけは理解してください。

 

今回は、オリンピックが近くなったこともあってか?ここ数年よく聞かれるようになったので、この内容を書いてみようかなと思います。

スケートボードのコンテストのジャッジについてうんちく語る前に私のジャッジ歴を少々。

なんせジャッジ歴はまだ1年っす!なんていうと説得力に欠けますからね。

 

ざっくり言うと私のジャッジ歴は2005年からなので今年で約15年です。

そしてAJSAの九州支部長&ジャッジを務め、今年で10年目。

ローカルコンテストやAJSAのようなオフィシャルコンテスト、2019年は日本スケートボード選手権のジャッジなどもさせていただきました。

ということで、僕よりジャッジ経験が豊富な方はたくさんいますが、まぁまぁのジャッジ歴有りということで、ジャッジ語って良し!ということでお願いします。笑

 

さて、スケートボードのコンテストにおけるジャッジですが、当然ですが大会のルールによります。

基本的にはジャッジは奇数の複数人で行われます。

よくあるのは3人、5人ですね。

もちろん2対2に分かれて誰が優勝!?ってならないようにするために、奇数人で行うことが多いです。

1人でジャッジを行うと、勝った負けたの判断の責任が全て1人にのしかかるし、その人の主観にかなり偏ってしまうので、基本的に1人でジャッジはしない場合が多いですね。

 

ローカルの大会とかでたまにあるのが、目立った人勝ち、盛り上げた人勝ちってやつ。

これは本当にジャッジから見て、とにかくうまくて目立った、かっこ良くて目立った、一発だけどとてつもないことをメイクして目立った、

一番体張ってたとか、ジャッジ陣の主観がふんだんに発揮されるジャッジ方法ですね。

個人的にですが、僕はこれは本当に好きじゃなかったですね。今も好きじゃないです。

どんだけメイクしても、やばいトリックしても、

この手の大会で勝っても負けても納得できたことは有りませんでした。

なんせ何が認められるのか分からない、ジャッジのお気に入りだからとか、もう不公平感半端ねーやん、って感じちゃいます。

まぁそれはさておき、次にワンメイクコンテスト。

これは大会時間中に一番やばいトリックをメイクした人が優勝ってパターン。

これはもうシンプルに分かりやすい。ジャッジ陣から見て、一番やばいと思われるトリックをメイクした人が優勝します。

ただ最近はもうトリックすごすぎてどのトリックがベストだったか!?というのさえも、

ジャッジで意見別れることが非常に増えてます。

すごいトリック多すぎて、ベストっぽいトリックを大量にメイクした人が勝ち。って感じになりがちですね、最近は。

ってここまでは割と簡単でライダー側もまぁ理解はしやすいジャッジ方法を紹介しました。

 

では次に本格的な大会のジャッジについて。

まずは、日本で最も歴史のあるコンテスト、AJSAのジャッジ方法について話せる範囲内で説明させて頂きます。

AJSAのジャッジ人数は5名です。

100点満点で行い、5名の中で、最低点をつけた人と最高点をつけた人の点数はカットし、

その他3名の平均でその人のランの点数が決まります。

少し分かりにくいと思うので、具体的に説明すると、

1人のランが終わって、ジャッジA:30点 ジャッジB:40点 ジャッジC:50点 ジャッジD:60点 ジャッジE:70点

だとすると、この場合、最低点の30点をつけたジャッジAと、最高点の70点をつけたジャッジEの点数はカットされ無効となります。

ジャッジB:40点、ジャッジC:50点、ジャッジD:60点の合計150÷3名=50点がその人の点数になります。

ジャッジの中にはヘッドジャッジと言って、ジャッジのボスを決めます。

最終的なジャッジの判断権限はこのヘッドジャッジに任され、ヘッドジャッジの責任はとても重いものになります。

 

全日本アマチュア選手権ジャッジの様子 ©AJSA

 

そしてヘッドジャッジも含め、個々のジャッジはライダーの何を見ているかというと、

トリック数、メイク率、ミス率、難易度、完成度、パークの使い方、着地の綺麗さ、スピードの速さ、ランの構成、かっこいいか、そしてサプライズがあるか。などなどです。

オリンピック種目っぽく言うと、

技術点(技数、メイク率、ミス率、難易度、着地)

構成点(パークの使い方、まわり方、ランの組み方)

芸術点(かっこよさ、スタイル)

のようなで感じで構成されてます。

いくら技数を多くメイクしても、基礎トリックや同じトリックばかりでは点数が伸びません。

1つのランに同じ技を2回以上したら、2回目以降はほぼ点数ないと思ってください。

いくらキックフリップが得意だと言っても、1つのランの中に2回も3回も組み込んだら、最初のキックフリップ以外はほぼ点数ありませんので、ご注意を。

また、難易度高いトリック3つのみで構成されたランで、3つ中3つメイクして、

難易度高いし、メイク率も100%じゃー!!というランを完遂したとしても、

それもそこまで点数は伸びません。なんせ3つしかトリック繰り出してないんだから。

さらに、めっちゃトリック入れまくって、メイクしまくったとしても、

着地がぶれぶれ、着地で手をつく、バンクトゥバンクでボトム落ちしちゃってるとか、

もう全部点数半減以下ですし、個人的にはバンクトゥバンクでボトム落ちとか正直メイクに値しないと思ってます。

なぜか!?それはストリートのバンクトゥバンクスポットでの撮影を想像してみてください。

ボトム飛びきってない映像使います?幅を飛びきってこそメイクだし、使える映像に値しますよね。

ということでバンクトゥバンクでボトム落ちは、もう個人的にはメイクじゃないと思ってます。

雀の涙ほどの点数をつける感じになります。

まぁそういった細かいことも含め、ジャッジはそれらを瞬時に見極め点数を出します。

この時、個々のジャッジのばらつきが極力少なくするように、

1人目2人目くらいまでは、ヘッドジャッジを中心に、今のは50点くらい。

という基準の擦り合わせを行います。

それを数名繰り返し、そのコンテストにおけるジャッジ陣での共通の基準を作り上げます。

その後はその基準を元に、ジャッジがそれぞれ点数をつけていき、全員が終わったところで集計し、

5人のうち最高点をつけた1名、最低点をつけた1名の点数を除外し、中間の3名の点数の平均点を算出し、

そのランの点数とします。

それを通常、予選だと1分間を1トライ、決勝だと1分間を2トライして順位を決めるという形になります。

とまぁこんな感じがAJSAでのジャッジです。

 

一方で近年かなりのというか、もはやこれがワールドスタンダードになっているstreet league方式のジャッジについてです。

スケート中毒の皆さんたちなら基本的なルールは知ってるはず。

45秒のランが2本。

ベストトリックを5本。

合計7本のうち、得点の高い4本の合計点で順位を決めるという方式です。

このジャッジ方法の特徴はなんといっても、on time(即時)で点数が出るところです。

そのため、ラン終了後、ジャッジは光の速度で点数を出さなきゃいけません。

そしてその合計点が即時にモニターに映し出されるのです。

ジャッジが即座につけた点数は、後戻りもできないし、ゆっくり考えたり、悩んでたりすることがほぼできません。

凝視、即決断、即採点です。あ~怖い笑。

 

次に、点数の基準ですが、street league方式でもやはり、基本的には一緒です。

まずは基準を作ります。

もしかしたら気になっている方もいるかもしれませんが、

street league方式でも、何のトリックが何点というようなルールブックがあるわけではありません。

繰り返しですが、最初にすることは同じです。

最初のランで、今のトリックはだいたい何点だったというのをジャッジ間で共有し、

まぁだいたいこのくらいの点数だな、というある程度の共通認識を持つのです。

どんな大会でも、とにかくまずは複数名いる「ジャッジどうしの基準を作る」が重要な作業になります。

そしてそれはあくまで共通の「基準」であり、「絶対」ではないのです。

それがスケートボードの良いところ、面白いところでもあると思います。

何のトリックが何点なんてのが決まっていたら、面白く無いし、スケーターだったら分かりますよね。

今のトリックがやばいかやばくないか。

例えば僕のかますヒールフリップ(僕はヒールフリップが苦手)と、neen williams様のかますヒールフリップ。

比べものになりません。これが同じ点数だったら僕は世界レベルのヒールフリップを持ってることになっちゃいます。笑

それくらい1つのトリックを切り出しても、スタイル、完成度によって点数が異なります。

一番分かりやすい例は、着地ですね。

着地がスムーズか否かはかなり重要なポイントになってきます。

スケッチーだったり、お手つきだったりすると、正直点数が半減近くになります。

street league見てるとたまにありますよね。

このトリックでこの点数!?低くない?とか言う場合。

それって着地がぶれてたり、4輪着地じゃない、次のトリック入れるようなスタンスで着地してない

といような場合だったりするんです。

ベストトリックだといっても、やはりスケートボードで大事なのはフロー。

つまりいかにスムーズに次のトリックに入れる状態で着地するか。

そのあたりまで細かく見てます。

まぁそんなこんなで、難易度、完成度、個性、スタイル、フロー、流れや空気感(後述しますが、サプライズ感)など、色んな個性を加味して、

そこにさらにジャッジの個性(見解)も加味して点数が弾きだされます。

それがオフィシャルな大会になればなるほど、精度、質が良いジャッジ陣が揃っているし、

ジャッジのメンバーも相当数のジャッジングをこなしているので良いジャッジが自然と生まれてくる。

という訳です。

 

©StreetLeagueSkateboarding

 

昨年、私は、日本スケートボード選手権のジャッジを1回経験させてもらいましたが、

その大会のジャッジに望むにあたり、street leagueを繰り返し見て、何回もジャッジの練習をし、

できるだけ世界のジャッジングの基準(感覚)と合うようにしてから本番に望みました。

なんせ日本の代表選手を決めるポイント大会で、世界基準のコンテストですから、

本来、国や地域、その時のジャッジによって基準がずれてしまうのはおかしいわけで、

当然ながらジャッジも世界基準でちゃんとジャッジングする必要があるからです。

おかげさまで、反省点もありつつも、最終的には良いジャッジ陣で良いジャッジが出来たと思いますが、

決勝戦はかなり緊張しましたし、選手のときなみ、またはそれ以上にマジで震えました。笑

 

ところでこのstreet league方式、on timeで点数がでるので見る側、滑る側は駆け引きなども合わせ、かなり面白いです。

自分が勝つためにどれくらいのポイントを出せば良いか、などを考えながらトライすることができるので、

そのライダーの攻め方、考え方、姿勢などが垣間見えちゃう感じが何とも言えませんよね。

一方でとにかくジャッジは難しいです。

ラン終了後、かなりの速度で点数を出さなければならず、しかも、同じセクション、同じトリック、同じ完成度のトリックをしていたら、

かけはなれた点数をつけるわけにはいきません。

どのライダーがそのトリックをして、その時は何点をつけていたか。

それを瞬時にはじき出し、そこに完成度やスタイルなどを加味し、点数を上下させる。

これを一瞬でださなきゃいけないのでほんとに難しいです。

 

それと、次に45秒のランとベストトリックのジャッジ関連性についてですが、

基本的にこれはもう、別の大会と見なしてジャッジをします。

要するに、45秒のランの途中で出したトリックと、それをベストトリックの1本で出しても、

そこに点数の関連性は有りません。

ちょっとわかりにくいですかね。

具体的にいうと、

「45秒のラン中に、8段ハンドレールでバックリップをメイクし、その他、バックリップ以上の難易度のトリックばかり4個メイクし、

合計でバックリップ合わせて5個のトリックをを全てメイクしたランの点数が8,5点だったとします。

5個のトリックのランの中で、最も難易度が低かったトリックがバックリップだった中で、ランの点数が8,5点だった。

そうするとバックリップの点数って、8,5点÷5個=1,7点っていうこと?

ベストトリックで同じセクションでバックリップをした場合、1,7点になってしまう??ということではありませんよ。」

という意味で、ベストトリックで8段のハンドレールでバックリップをメイクした場合、

1,7点などではなく、通常の1トリックとしての点数がしっかりゲットできます。

それくらいランの点数とベストトリックの点数は関連性はなく、

別物の大会というくらいの感覚でジャッジがされます。

まぁこれは、実際にstreet leagueを見ててもよくあることで、

見ている人は既に分かっているかと思います。

とまぁこんな感じがstreet league方式のジャッジ方法になります。

 

 

さて、ここまでかなり長文書いてきましたが、1つ伝えてない重要なポイントがあります。

それは、「サプライズ」です。

これは、おそらくどのコンテストでも共通します。

コンテストでのサプライズ。それはなんだと思いますか?

皆が驚くようなぶったまげたトリックを連発することでしょうか?

いやいや。それを1日中してたら最初はびっくりしても、帰るころには皆どうせこれでしょ?ってなりますよね。

予選と決勝を同じランしたのに、決勝の方が点数が低いのはそういうことです。

もう次それっしょ!?ってわかるランなんて、面白くないですよね。

サプライズはその逆。

練習、予選、決勝を通して決勝の最後の最後までそのトリックを一回も見せないようにしておくのです。

そしてラストのラストに一発でとんでもないことを発一でメイクするんです。

ままままままま、まじっすかーーー!?ここでそれ!?ドシブですかーーー!??!!?

ってなりますよね。

それが点数にもかなり反映されます。

 

 

いくらどのトリックがどれくらいという点数が概ね決まっていたとしても、

このサプライズに勝るものはないでしょう。

なのでコンテストで勝ちたいライダーの皆さん。

決め手となるトリックは、前日の練習や、誰も見てないようなところでこっそりあっためておいて、

大会当日は決勝まで封印しておきましょう。

ラストのラストにぶっかましたらドシブでコンテストを終えられること間違いないでしょう。

あいつまじかっけー!みたいな。

その後、ライダー、ジャッジ、オーディエンスからのリスペクトと祝福、

ゲットマニーに、新しい契約をゲットしちゃったり、夜はギャルちゃんたちにモテモテに・・・。

いいですね~~~~~。スケート最高。

そしてかく言う私。

これだけうんちくを書いてるもんですから、若いころはそれはそれは若いころに良い思いを・・・

一度もしてません!!

世の中そんなあまくないよね~~~。

ってことで第二話、完。

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