【日本オープン】草木ひなのが優勝“Tシャツに込めた想いとは”男子は永原悠路が接戦を制し逆転優勝
2022.04.12
4月10日に神奈川県藤沢市にある、鵠沼海浜公園スケートパークで、スケートボード日本オープンのパーク種目が行われ、女子は草木ひなのが昨年(2021年)12月の日本スケートボード選手権に続いて優勝。
男子は永原悠路が最終滑走でそれまで首位だった笹岡建介を逆転し、初優勝を飾った。
今大会は、一般社団法人ワールドスケートジャパンが主催する初めての「日本OPEN」となり、2022年の国際大会派遣選手の選考と、ワールドスケートジャパン強化指定選手の選考を兼ねており、2024年パリ五輪を目指すスケーターにとっても重要な大会となる。
スケートボード・パーク種目は45秒間滑走するランを3本行い、100点満点中一番高かった得点で競われる。
ランの途中で技を失敗してしまうと、その時点で滑走は中断され、それまでに決めた技の得点となる。
4月2日に行われた日本オープン、ストリート種目の男子は雨の為ノーコンテスト(代替え試合を設ける予定との事)。女子は予選の結果が最終順位となっている。
【鬼のエアトリック・草木ひなの】
バックサイド540
昨年12月の日本スケートボード選手権に続き、今大会も圧巻の滑りで優勝した草木ひなの。
彼女の持ち味である、高いエアといぶし銀なトリック構成で、女子では唯一の50点台で優勝を勝ち取った。
それでもインタビューでは、前回の日本選手権の時と同じような技(のルーティン構成)になってしまって悔しいと話していた。
【Tシャツに込めた特別な想い】
今大会、印象に残ったシーンがある。
スタート前にTシャツの胸に手を当てるような仕草を取っていたのが気になっていたが、表章後のインタビュー時にその理由がわかった。
スケーターにとって一緒にスケートボードをし、出来なかった事を乗り越えた時の感動を分かち合ったスケート仲間は、仲間以上の強いつながりが生まれる事がある。
そしてそれは年齢の垣根も超える。
草木がスケートボードを始めたばかりの頃から一緒に滑っていたスケート仲間の一人、ケイゾウさん(40代)という方が今年2月に亡くなってしまい、そのケイゾウさんのお気に入りだったというTシャツを着て、草木はこの日の大会に挑んだ。
最後に「ケイゾウさんに負けないようなスケーターになるのが一番の目標です」と話し、インタビューを締めくくった。
【国際大会の常連・小川希花】
フロントサイドリップスライド
大会が開催された鵠沼海浜公園のローカルスケーター、小川希花が準優勝!
決勝進出者で唯一の20代である彼女は、多くの国際大会に参戦する経験を持ち、21歳にしてベテランとも言える安定感を見せた。
【フルメイクならずも3位・開心那】
バックサイドクレイルスライド
華麗なノーズグラインドが持ち味の開心那は、他ではあまり見ることのないバックサイドクレイルスライドなどを披露し、他のスケーターとは違ったトリックの引き出しを見せた。
決勝では残念ながらフルメイク(ノーミスのラン)する事は出来なかったが、それでも3位に食い込むスキルの高さを見せた。
【観衆の視線を空に・永原悠路】
バックサイド540
2021年6月に右足の大腿骨を骨折するという大怪我を負い、半年間スケートボードが出来なかった永原は、最後の3本目の滑走で見事この日一番のランをメイクし、逆転優勝。
今大会は「ミスする事は考えずに、全部出してやろうと思った」と話し、「やりたいことを全て出し切っての優勝で嬉しい」と記者団に語った通り、高いエアトリックで見る者を魅了した。
【日本のパークシーンを牽引・笹岡建介】
ヒールフリップインディ
準優勝の笹岡建介は決勝1本目にノーミスのランを披露し、71.33点を獲得。
一気に優勝圏内の得点を叩き出すが、2本目、3本目のランではミスが続いてしまい得点を伸ばす事が出来なかった(それでも3位とは10点以上の差をつけている)。
準決勝進出者の中で唯一の20代。これからも日本のパーク種目シーンを牽引していく存在感を見せてくれた。
【13歳にして空中戦に参戦・櫻井壱世】
キックフリップインディ
宮崎県から参戦の13歳、櫻井壱世が今大会3位に輝いた。
決勝のラン1本目では、キックフリップインディやマックツイスト、540など高得点の出るトリックを高い完成度で披露。
特に見ていてカッコよかったのが、バックサイド540をメイクした直後に間髪入れずにフロントサイド360を決めてくる場面。
少しでもブレがあると、連続して決める事が出来ないコンボトリックを見事に決めていた。
【日本最高峰のステージとして】
日本オープン、ストリート種目の決勝は4月3日(日)に三重県の松阪市総合運動公園スケートパークにて行われる予定だったが、雨予報の為前日に変更され、4月2日(土)に予選と準決勝・決勝が行われた。
しかし、2日は競技途中から雨が降ってしまい、女子は予選の結果が最終結果となり、男子はノーコンテスト(代替え試合を設ける予定)という結果となってしまった。
女子の決勝進出者の中には、決勝の為に取っておいたトリックを見せられない悔しさがあっただろうし、男子に至ってはこの日の為に決してアクセスが良いとは言えない、松阪スケートパークへ東京から毎週のように通い、車中泊をしていたキッズや親御さん達の努力を見ていただけに、彼らの心情は察するに余りある。
オリンピック種目となったスケートボードは、今や世間からの注目を集め、公の大会ではいろいろ難しい面も浮き彫りになってしまうかもしれないが、多数のメディアが集まる大会を通して、大人も子供も年齢の垣根を越えて楽しめるスケートボードの魅力やカッコよさを、これからも多くの人に伝えていくと同時に、子供達にとっては夢のステージへの一つとして、これからも発展していってほしいと願う。
写真・文 小嶋勝美 Twitter: @katsumikojima1
スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。
約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。
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