INTERVIEW:荒川“ホモロー”雄介 駄菓子屋がコンセプトのスケボー屋
2018.05.01
京都のスケートショップ「BOARD WALK SPORTS KYOTO」の店長、荒川雄介さん。“ホモロー”の愛称で親しまれ、超がつくほどのスケートオタクとしても有名。そんなホモローさんに京都のスケートシーンについて聞いてみた。
― お店の紹介をお願いします。
もともとサーフ・スケートショップで、2010年にスケート専門店として独立した感じやね。うちは8年目やけど、BOARD WALKの名前では38年やってるかな。「社長から店番しとけ!」って言われて、それが25年続いてる感じ(笑)。
この店はもともとはサーフの出張所で、ある日社長から「お前もぼちぼち一人でしっかりせんとなぁ」って言われて、寝ぼけながら返事したんよ。それで次の日の朝に店来たら商品も何もかも全部なくて、契約も解約されてて……最初、泥棒が入ったんかと思った(笑)。強引なやり口やったけど、社長なりの優しさやったんやと思う。その時は何もなかったから、とりあえずLRGに助けてもらって。はじまりはそんな感じやね。
― BOARD WALKは店に来るスケーターとめちゃくちゃ親密ですよね。ホモローさんの家でみんなで風呂入ってたり(笑)。
「駄菓子屋さん」がコンセプトなんで(笑)。で、僕は駄菓子屋のオバハン的な立ち位置。だから、あえてスケートショップじゃなくて、「スケボー屋さん」って銘打ってる。カッコイイとかカッコ悪いとか、もう一周まわってどうでもいい(笑)。できるだけアホな感じにしてふざけてる。っていうのも、スケートショップって敷居が高くて入りにくいから、良い意味で限界まで敷居を低くしようと思ってて。
けど、スケートに関する知識はしっかりあるし、どんなこと聞かれても答えられるようにはしてる。通販より高いかもしれんけど、その分この店でええ話聞けたし、ええかなって思ってもらえたら、うれしいな。
― 京都のスケートショップならではっていうのありますか?
スケートショップに限らず、京都の小売業のスタイルって異質で、いわゆる「一見さんお断り」っていうのがある。誰かの紹介がなく、初めて訪れた人は入店を断るっていう京都人の「いけず」のことやけど、うちみたいな店に来る小学生とかでも「誰々の紹介で来ました」って言うて来る(笑)。まぁ、意味的には常連価格にしてぇなってことなんやけどね。
あとは、発信する動画や写真にはお寺や神社を映るようにして、京都っぽさみたいなものを絶対入れてるかな。やっぱり外国人から見たときに、京都ってすごい知名度やし、そこは狙ってやってる。
― BOARD WALKでサポートしてるライダーっていますか?
絶対的トップライダーは、このインディさん(愛犬)で、森中一誠、岩田 祐介、えー……あと誰やっけな(笑)。
あっ、鷲見将太、大石恵蔵、井上徹、明田剛、小泉卓司……たしかそんなもんかな?
― 一誠、有名になりましたねー。
そうやねー、僕がこっちで独立したときにライダーでピックアップして。そのときは完全に無名やったけど、この8年でかなりええとこまでいきよったね。今ついてるスポンサーも、ガール、NIKE SB、LRG、ROYAL、NIXON、MOMENTAM、RUSH、JESSUP……もう分からへんわ(笑)。
京都は、15年周期くらいで全国的なスケーターが出るな~。キャバさん(大村滋)、andy(安藤健次)とか。キャバさんなんかはアメリカで活躍して、ダントツにうまかったし。
― たしかホモローさん自身もBOARD WALKのライダーでしたよね。
ライダー兼店員で、17のときから30までサポートしてもろたかな。あとDC SHOEと……あれ、何やったけな(笑)。あ、そうそうちょっとの間だけZOOYORKにお世話なってー、あとTSA、DIAKKA、MJ FACT、Hurley。たぶん、そんなもん。
当時、DCは大阪の清水一人君、三枝博貴君、井上徹とか……もう20年ほど前かな。僕がお世話になってたチャーリーさんとかLRGは、今は一誠がお世話になってて。世襲してるみたいな感じするね。
一誠は、スポンサーが決まった数日後に「Red Bull MANNY MANIA JAPAN」で優勝したんかな。当時の一誠は、コミュニケーションが下手で、何にも言いおらへんかってんな。ニューヨークの「MANNY MANIA」から、少しずつ変わっていったかな。
デッキなり、シューズなり、必要なものは自分でアピールしないとダメだって分かったっていうか。黙ってスケボーさえしてたら、スポンサーがついてくれるっていうのは世界のトップレベルだけ。とくに今の子はそういう風潮が強いけど、それを助長するブランドはあんまり関心しないね。
― 8年間、一誠をサポートしてきて印象深いエピソードはありますか?
LRGから出たパートは感動したかな。世界的に見てもらえるはじめてのパートで。試写会で一誠が泣いてたときはグッときた。
当時はフィルマーもいなくて、一誠も自撮り状態。でも、フィルマーやフォトグラファーがいないから何もつくらないのは言い訳やから。一誠もそこに対する意識が変わったんかな。あいつが動いたから、その後撮ってくれる人たちが集まったんやろね。
ただ、フィルマー泣かせやで。あいつの「ラス1」は「ラス1000」やから(笑)。
― ホモローさんは、京都のスケートパークの設立にも関わってるんですよね。
京都のスケートボード協会のヒデさん(今井英之)と一緒に火打形スケートパークをつくる活動をしてたね。当時は、地元の人に「そんな暴走族場みたいなもんつくるな」ってよく怒られた(笑)。スケートパークのことを掃き溜めみたいに思われてたし、鍵かけて閉じ込めとけみたいな。ケガに対する対応とか、ルール守らないやつはどうすんねんとか、そこでのやり取りではじめて大人のルールを学んだ感じ(笑)。
うちの店に来る子が、よく「滑る場所ない」って言うんやけど、自分たちでもっとつくったらいいのにって思う。パークじゃなくても、自分でセクションつくったり、ローカルのスポットを見つけたり、スポットのルールをつくったり……若いんやし、何でもできるんやから。当時学生だった子が、大人になってから店に来て、あのとき自分で動いておけば良かったなーって言ってるのをよく聞くからね。
― 今の子たちを見て、何か感じることはありますか?
ちょっと可哀想かなって思う。たとえばスマホ。これで全部できてしまうやん。音楽聴きたいからウォークマン買おうとか、写真撮りたいからカメラ買おうってならないし。これひとつでコミュニケーションもとれるし、なんやったら映像の編集までできてしまう。
僕らの時代はビデオデッキ2台使って編集したり、レンズにサランラップ巻いてテロップの文字書いたり、レンズ逆向けにしてガムテープでひっつけたり。いろんなことを試すことができたから、新しい発想とか興味が自然と湧いたし、貪欲になったよね。今は僕も便利なもの使うけど、あの時何もないなりに工夫してた経験があったからこそ、今も役立つことがたくさんある。
― オリンピックについてはどうですか?
正直、僕はスケボーで生活してるから、生活が潤うのであればやってほしいけど、オリンピックが原因になってスケートボード産業がダメになるなら反対。やってみないと分からへんけど、ストリートでスケボーするのは厳しくなるんちゃうかなぁ。コンテストとストリートは、より二分化するやろうね。ヘルメット被ってパークでルール通りに滑るっていうスケボーが、オリンピックによってメインストリームになるのは少し嫌かな。そうなると、スケボーの魅力が100分の1くらいになる。映像の機材とか、音楽とか、ファッションとか、スポットの選び方ひとつとってもスケボーやしね。
― これからスケートをはじめる人たちに、その魅力を教えてください。
スケボーは道があれば、どこでもできるのが良いところ。あと、スケボー通して友達ができるし、街の見方も変わってくる。そこからデザインに目覚めたり、音楽に興味をもったり、いろいろなことが見えてくる。スケボーをきっかけにして、自分を表現することができるのが魅力かな。
― ありがとうございました。じゃ、今月もコラムの締切が迫ってるのでお願いしますね(笑)。
ぼちぼちやります(笑)。
【プロフィール】
荒川雄介 Yusuke Arakawa
1976年1月18日生まれ。長年、京都のローカルシーンを牽引してきたSUN FLOWERのライダーであり、BOARD WALK SPORTS KYOTOの店長。豊富なスケートの知識で、数多くのスケートビデオの制作にも携わっている。本サイトでもディープなスケートコラムを執筆中。
■ 店舗情報
BOARD WALK SPORTS KYOTO(ボードウォークスポーツ京都)
住所:京都市上京区河原町今出川下ル西入ル大宮町339-1
(地図)
連絡先:075-256-7300
営業時間:12:00~21:00
定休日:火曜
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