韓国で開催された「ASIAN OPEN 2018」をリポート
2018.06.11
フォトグラファーの吉田佳央です。
数年前から開催されているAJSAのアジアンオープン。すでに多くの人に認知されているものの、韓国での開催とあってその実情は知らない人も多いはず。そこで実際に韓国へ足を運び、コンテストの内側を覗いてきました。
五輪の波を受けて変化するコンテスト
今回で5回目の開催となったASIAN OPEN、今年は6月2日にソウル中心部から約30kmほど離れたチュクジョン駅にあるYONGIN JUKJEON X-PARKにて開催され、日本からもオフィシャルツアーや個人参加を含めおよそ50名が韓国へ飛んだ。
そもそもこのコンテストは、韓国にあったムラサキスポーツが当地でイベントを開催しようと、2014年にスタートした。その後、2016年にスケートボードが東京オリンピックの追加種目に決定したことで昨年より韓国ローラースポーツ連盟の主催となり、今年はよりその色が濃く出たコンテストとなった。ローラースポーツ連盟は世界各国に支部をもつ世界規模の団体であるため、スケートボードの垣根を越えた連盟同士のネットワークで各国のライダーを集めることができ、より多くの国が参加するきっかけをつくった。今回は日本、韓国、台湾、香港、タイの計5か国が参加。中国とオーストラリアは諸事情により不参加となったが、連盟のネットワークを駆使すれば、来年以降はさらに多くの国の参加が見込めるとのこと。
大会形式は基本的には以前と変わらず、予選・決勝ともに1分2トライで良い方のスコアを採用するが、今年は地元枠で韓国人の決勝進出枠が撤廃されたのが一つの大きな特徴といえる。ここ数年で劇的に韓国ライダーのレベルがアップしたこと、そしてなによりも5か国の参加により、本格的な国際コンテストといえる土台ができたことが背景にある。
主催の韓国側としては決勝を日本人だけで争うことだけは避けたいところだが、計73名のエントリーのうち日本人は39名、レディースクラスも9名のエントリーのうち日本人は5名と、どちらも半数以上の割合を占め、近隣国と比較しても日本人ライダーの圧倒的な層の厚さがうかがえた。出場選手のなかには以前Unifulのライダーとしても活躍していた台湾人のアディーなど実力派ライダーも顔をそろえていたが、彼も日本の10代スケーターのスキルを賞賛していたほどだった。
レディースクラスを制したのは伊佐風椰
決勝の前に行われたレディースクラスは9名による3か国間での争いとなった。ここでは5月の日本選手権を制した伊佐風椰と、シアトルで開催されたWHEELS OF FORTUNE 9を制し、X-Gamesミネアポリスへの出場を決めた藤澤虹々可に注目が集まった。レディースレベルではズバ抜けたスピードと高さで高難度なルーティーンに挑みながらもメイクにつなげられなかった藤澤虹々可に対し、伊佐風椰は自身の持ち技を確実にメイクして優勝。ここ一番での勝負強さが命運を分ける結果となった。
王者 vs 元王者の陰で台頭する次世代のスター
最後はメインイベントのアジアンオープン決勝。日本からは14名が通過となり、残りの2名はこの2年で劇的な成長を遂げたイム・ヒョンソンと、トランジションを中心にスピーディーに攻め立てた高校2年生チェ・ユジンの韓国勢となった。
決勝は非常にドラマチックな展開となり、多くの感動を呼んだ白熱の展開に。1本目から各ライダーがこのためにとっておいたであろうトリックを次々と披露。誰もが予選よりも難易度を上げたルーティーンで勝負に出た。
池田大輝は1本目のラストトリックでB/S270ボードスライドにトライするも負傷。そして大輝の兄、池田大亮のランへ。この日は予選を含めた3本ともミスが目立っていたが、B/S360ノーズグラブや、ヒップでのキャバレリアル、F/Sフリップ、そしてマックツイストと、高難度なトリックを織り交ぜすべて完璧にメイク。そして、時計が残り2秒となったところで弟が負傷したB/S270ボードスライドをねじ込み勝負アリ。続けざまにB/S270キックフリップもメイクしたこのランは、本人も完璧だったと言っていただけあり、観客の声援も味方につけ、本人も優勝を確信したかのような笑みを浮かべた。
しかし、今年のASIAN OPENはこれだけでは終わらない。池田大亮は予選を8位で通過していたため、この後にひかえるライダーもこの会心のランに勝つトリックを狙いにきたのだ。そこで魅せたのが昨年のAJSAチャンピオンの佐川涼。クォーターでのB/S360オーリー、ヒップではS/S S/S 270フリップ、ノーリービガースピンヒールと難易度の高いトリックで構成し、意外性と発展性という意味では池田大亮をしのぐインパクトを与えた。結果として池田大亮がわずか3点差で佐川涼をかわして優勝となったが、昨年と一昨年の王者による戦いは本当に見ごたえのある内容だった。
惜しくも入賞はならなかったが、池慧野巨のトリックセレクションの幅広さと難易度、スタイルはスケールの違いを感じさせるものだったし、青木勇貴斗も2ndランで靴紐がほどけるアクシデントがなければさらなる上位進出もありえただろう。もちろん、ほかにも次世代を担うスター候補たちは日本各地にひしめいている。
そして今回も日本人の表彰台の独占を目の当たりにした他国ライダー陣は、来年こそ日本に追いつこうと必死に努力を重ねてくるはずだ。今年は5年目にしてはじめて5か国のライダーが集結したASIAN OPEN、出場するライダー陣はもちろん、運営陣も試行錯誤を重ねてより魅力のあるコンテストへと成長を続けている。来年はオリンピックを翌年にひかえ、新たにオープン予定のニューパークでの開催を検討しているとのことで、さらにコンテストは発展していくことだろう。今年築き上げた土台をもとに、来年のさらなる盛り上がりに期待したい。
■ イベント概要
イベント名称:AJSAプロツアー第2戦 アジアンオープン
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