【JAPAN STREET LEAGUE 2023シーズン開幕戦】ムラサキパーク東京最後の大会を制したのは佐々木音憧
2023.04.11
世界最高峰のスケートボードコンテスト「ストリートリーグ」の世界観を踏襲し、日本のスケートボードを海外へアピールすべく始まったコンテスト、JAPAN STREET LEAGUE(ジャパンストリートリーグ、以下JSL)の2023年シーズン第1戦『Be Geeking』が4月9日に開催され、世界のハンマートリッカー(大きなセクションで行う難易度の高い技)をもうならせる滑りを見せた佐々木音憧(とあ)が優勝。
シーズン総合優勝の根附海龍(ねつけ かいり)が2位、映像選考を勝ち上がっての参戦となった浦野建隼(けんと)が3位、韓国からの招待選手で最年少出場の12歳、張爾洙(ジャン イス)が4位に入賞した。
会場となったのは、東京都足立区にあるムラサキパーク東京。
ローカルスケーター達からは“ムラパー”と呼ばれ、日本選手権をはじめ数々の大会が行われ、東京五輪金メダリストの堀米雄斗など、著名なスケーターを輩出していることで知られる伝説的なスケートパークだが、足立区による土地の再開発が決まり、今年5月に閉鎖となってしまうため、今大会はムラサキパーク東京で行われる最後の大会となった。
なお、今大会の模様はフジテレビの動画配信サービス、FODにて無料でライブ配信され、アーカイブ配信も予定されているとのことなので、是非チェックしてみてほしい。
今回のJSL第1戦は、昨シーズンの成績上位者に加え、招待選手と映像投稿による選考を勝ち抜いた計16名が参戦。
次回の第2戦は7月2日に埼玉県所沢市のSKIP FACTORY、第3戦は10月1日に愛知県蒲郡市にあるDELIC skatepark、最終戦は12月3日にSKIP FACTORYで行われる予定で、こちらも全てフジテレビが運営する動画配信サービスFODにて配信される。
※4月9日時点
【- Be Geeking –出場選手とルールについて】
Be Geeking出場選手
齋藤 丈太郎(17) / 村上 涼夏(17) / 山附 明夢(17) /佐々木 来夢(19) / 佐々木 音憧(16) / 根附 海龍(19) /
池 慧野巨(21) / 安部 来夢(16) / 浦野 建隼(19) /齋藤 吟平(14) / 浦野 晴(17) / 西山 奏(15) /高橋 陽太(17) / 柿谷 斗輝(20) / 岸田 義己(32) /張 爾洙(12)
()内は年齢
JSLのルールはWORLD SKATEが2024年パリオリンピックに向けて発表した、公式採点フォーマットと同様となる。
・コース内を自由に滑走するランを2本と1発技のベストトリックを5本行い、3つのトップスコアで順位を競う。
・この内、ランのベストスコア1本とシングルトリックのベストスコア2本の合計が総得点となり、それぞれ100点満点で、小数点以下2点まで(最高得点は300.00点)
同点選手がいた場合はランの最高得点で順位を決定し、それでも決着がつかない場合は、シングルトリックの最高得点をもって決着となる。
・選手は、より完成度の高いトリックのメイクを目指したい場合は、メイクしたトリックを破棄する権利がある(ベストトリックで同じトリックを行うと必然と得点が下がる為)
高得点の目安として、90点以上が最高難度のトリックとなる。
【世界クラスのハンマートリッカー/佐々木音憧】
佐々木音憧/インポッシブル
本場ストリートリーグでも間違いなく通用するであろう、ハンマートリックを決めた佐々木音憧がムラサキパーク東京最後の大会を見事に制した。
佐々木音憧/バックサイド360キックフリップ
ムラサキパーク東京は、東京五輪の開催が決まってから行われた第1回〜第2回日本選手権の会場でもある。
他にも日本オープンなど、多くの大会がこの場所で行われ、筆者も取材に訪れたが間違いなくムラサキパーク東京での大会は、今回が1番レベルが高かったと言える。
その集大成とも言えるのが、佐々木音憧によるロングバンクトゥバンクでのバックサイド360キックフリップで、この日最高の92.53点を記録した。
【2022王者の貫禄を見せた/根附海龍】
根附海龍/ヒールフリップ フロントサイドボードスライド
スケートボードの本場、アメリカの老舗ブランドZERO Skateboardsからサポートを受けて活動する根附海龍。
昨年のシーズン王者にふさわしい滑りでオーディエンスを沸かせた。
根附海龍/バックサイド180 レイトショービット
予選を3位で通過し、決勝ではランで80点の高得点をマーク。
ベストトリックでは、バンクトゥバンクでバックサイドヒールフリップ レイトショービットを狙うが、惜しくも決めきれず2位に終わった。
【本場LA仕込み/浦野建隼】
浦野 建隼/バックサイドブラントスライド to ボードスライド
今大会は映像審査を勝ち抜いての参戦となった、浦野建隼。
こちらも本場アメリカの老舗ブランド、REAL Skateboardsからサポートを受けているだけあって、他の選手とはまた違った攻め方で大会を盛り上げた。
浦野 建隼/バリアルキックフリップ
バンク越えのトリック(バリアルキックフリップ)では板を2枚折りながらも、最後にはジャッジのデッキを借りて執念のメイク。
スケートボードは繊細なコントロールが要求される競技なだけに、自分ならではのデッキセッティングでないとボードのコントロールは、よりはるかに難しくなるにも関わらず、最後まで諦めずにやり遂げる精神力を見せた。
【最年少にして勝負強さを見せた/張 爾洙】
張 爾洙/360ダブルキックフリップ
お母さんが日本人、お父さんが韓国人という張爾洙(ジャン イス)選手は、スケートボードの実力が認められ、今回は招待枠でJSLに参戦。
12歳ながらも緊張を感じさせない堂々とした滑りを披露し、予選を8位で通過。
張 爾洙/バリアルヒールフリップ
決勝のベストトリックでは他の選手のミスが続く中、安定したメイク率で得点を重ね、見事4位に入賞した。
【真の実力者/池 慧野巨】
池慧野巨/バックサイド ビッグスピン
この日、予選を1番盛り上げたのは間違いなく池慧野巨(けやき)だった。彼は2018年にムラサキパーク東京で行われた第2回日本スケートボード選手権大会で優勝しており、昨年11月に新潟で行われた第5回日本選手権でも準優勝に輝いている。
日本トップクラスの実力を持ちながらも、今大会はランが奮わず惜しくも予選9位で敗退となってしまったが、ムラサキパーク東京のロングバンクトゥバンクをバックサイドビッグスピンで攻略した瞬間、これを見た誰もが彼のファンになったに違いない。
【自分が作ったスケートパークの最後の錦を飾る/立本和樹】
今大会、紹介したいエピソードがある。
数々のコンテストが行われ、東京五輪金メダリストの堀米雄斗をはじめ、多くのトップスケーターを輩出してきたムラサキパーク東京は、5月7日までの営業で閉鎖が決まり(4月10時点で)、今大会がここでの最後の大会となる。
このスケートパークを作ったのは、何を隠そうJSL主催者の一人である立本和樹氏。
自身が作ったスケートパーク最後の大会を、自身の大会で締める。これを偶然と呼ぶにはあまりにも運命的に思える。
今大会中継を担当した、FOD放送でのプレゼント企画のキーワードは、
「ありがとうムラパー」
世界クラスのスケーターを世に輩出したこのスケートパーク、最後の最後にさらなる日本のスケートボードの進化を見せてくれたことに改めて、立本氏をはじめとするスケートパークの運営に関わった全ての人に「ありがとうムラパー」と賛辞を贈りたい。
【Be Geeking~オタクになる】
今回のJSLタイトルは「Be Geeking」
Geekとは「オタク」という意味だ。
スケートボードほど、オタクなスポーツはないと思う。
技の完成度、スタイル、ギアの選び方から服装のこだわり、考え方などなど、
このオタク度合いから、人それぞれの個性とスタイルが生まれる。
スケーターはみんなオタクだ。
そう言い切ってしまえるほど、奥の深いスポーツであり、遊びであり、カルチャーだ。
「Be Geeking」このサブタイトルからは、そんな主催者側の思いや意図を感じた。
日本発の大会で、日本発のカルチャーを作るJSL、今大会でも次々とレベルが上がっていく日本のスケートシーンのリアルを見た。
さぁ次なるヒーローは誰になるのか、次回が楽しみだ。
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