【スケートボード世界選手権・パーク】開心那が準優勝!四十住さくら3位、草木ひなのが4位に。優勝はスカイ・ブラウン

2023.02.13

2024年パリオリンピック出場がかかる重要な大会、2022年度スケートボード世界選手権・パーク種目の決勝が2月12日にUAE(アラブ首長国連邦)シャルジャにあるアルジャダスケートパークで開催され、日本人の母を持つイギリスのスカイ・ブラウン(14歳)が優勝。

スカイ選手は3本目のランでキックフリップインディ(空中で板を縦に1回転させる)、フロントサイドノーズグラインド(デッキの前側の車軸でコースの縁を滑る)、フロントサイド540(背中側に空中で1回転半回る)などの大技を決め、女子では唯一の90点台を獲得した。

日本勢では開心那(14歳)が2位、四十住さくら(20歳)が3位、草木ひなの(14歳)が4位にそれぞれ入賞。

 

 

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男子は東京五輪ストリート種目の銅メダリストで、パリ五輪ではストリートとパーク種目の二刀流挑戦を目指す、ジャガー・イートン(21歳)が見事優勝。

決勝進出者の中では、唯一ラン3本をフルメイク(つまり全てノーミス!)で滑りきった。

ジャガー・イートンは先日の世界選手権ストリート種目でも決勝に残り、最後まで優勝争いに食い込む活躍を見せており(ストリートではアメリカ勢最高位の6位)パリ五輪でも、ストリートとパーク2種目でのメダル獲得に期待がかかる。

今大会のパークコース設計に携わった東京五輪金メダリストで、オーストラリアのキーガン・パルマー(19歳)は残念ながら決勝では3本ともフルメイク出来ず、8位で終わった。

男子の日本勢最高位は永原悠路が23位。

準々決勝での敗退となったが、最後のランでは新技キックフリップバックサイドリップスライド(板を空中で1回転させてコースの縁を滑る技)を決め、会場を沸かせた。

スノーボードとの二刀流が話題となった平野歩夢は、国際連盟シード枠で出場権を獲得し、オープン予選に出場。

残念ながらフルメイク(ノーミスで滑り切る事)出来ず、予選を92位で終えた。

平野選手は1月27日に開催されたX Gamesアスペン大会にスノーボードで出場(6位)しており、そこからの調整などを考えると(スノーボードとスケートボードは一見似ているようでも、デッキコントロールや乗り方が変わってくる)通常では考えられないスケジュールとコンディションでのスケートボード世界選手権への挑戦だったが、競技中は終始笑顔で、自分の挑戦を楽しんでいるようにも見えた。

昨年までの世界ランキング1位で、準々決勝からのシード権を持っていた岡本碧優は今大会を棄権している。

スケートボード世界選手権2022は2024年のパリ五輪予選を兼ねており、オリンピックランキングのポイントが加算される為、パリ五輪出場を目指す選手にとっては最も重要な大会に位置する。

 

【パリ五輪スケートボード・パーク種目のルール】

 

パーク種目のルールは東京五輪と同様となる。

45秒間自由にコース内を滑り、技を披露するランを3本行い、その内の最高得点で順位が決まる。

採点は100点満点で、小数点以下2点までとなる。

ジャッジの基準は技の難易度と多様性、技の出来栄え、コース全体を流れるように使い、全体のセクションを使えているか等。

【パリ五輪の出場枠は?】

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パリオリンピック・スケートボードは、2024年6月24日時点でオリンピック世界スケートボードランキングに入っている必要があり、東京五輪と同じくストリート(男女)とパーク(男女)の4種目が行われ、各種目22名ずつ(合計88名)出場でき、東京五輪の時よりも8名多く出場出来るようになった。

※1カ国1種目につき、最大3人までの出場。

五輪ならではの見所は、5大陸(アフリカ・アメリカ・アジア・ヨーロッパ・オセアニア)枠が確保されている所。

1つの大陸から、選手がオリンピックランキングの上位に入れず、出場枠を取れなかったとしても、その大陸の代表選手のランキング上位の選手が出場出来る為、世界的な大会ではなかなか見る事の出来ないような国の選手も、五輪の大舞台で見る事が出来る。

東京五輪の時は、デンマークのルーン・グリフバーグや、南アフリカ共和国のダラス・オーバーホルツァー(共に当時46歳)の出場が話題になった。

参照:【ダラス・オーバーホルツァー】東京五輪スケートボードに出場確定の46歳は南アフリカの英雄!

https://magazinesummit.jp/hobby_sport/578923210610

 

【挑戦する素晴らしさと勇気を見せるレジェンド達】

2022年度パーク世界選手権、男子予選前半の映像

 

(YouTube:https://www.youtube.com/live/m1gEsR8Weas?feature=share)

※アンディ・マクドナルド17分55秒付近(ボディバリアル540など今なお現役)

 

オリンピック予選では、通常の国際大会では見る事の出来ないような、レジェンドスケーター達を見る事が出来るという楽しみ方も。

筆者(41歳)世代のスケーターなら知らない人はいないであろう、アメリカのアンディ・マクドナルド選手(49歳)や、東京五輪に出場したデンマークのレジェンド、48歳のルーン・グリフバーグ選手、他にも以前にマガジンサミットでも取り上げた、南アフリカの生きる伝説、47歳のダラス・オーバーホルツァー選手の姿も今大会で見る事が出来た。

 

2022年度パーク世界選手権、男子予選後半の映像

 

(YouTube:https://www.youtube.com/live/slnNky5ZhfY?feature=share)※ダラス・オーバーホルツァー55分50秒付近(2本目のランで見事にフルメイク)

ダラス選手は2本目のランで見事なフルメイクを披露し、会場からはその挑戦をたたえる歓声が上がった。

何歳になっても挑戦を続ける彼らの姿からは、本当に勇気をもらえる。

【ノーズグラインドのさらなる高みへ・開心那】

 

女子パーク決勝は、東京五輪メダリストの3人(四十住、開、ブラウン)に加え、今回から日本の新星、草木ひなの選手が加わった事により、大接戦の展開を見せる。

そんな中、東京五輪銀メダリストの開心那選手は決勝2本目のランで新技、ノーズグラインド270アウト(リバート)を世界に見せつけた。

以下、2本目のランでのトリック。

・リーントゥテール

・インディエア

・フロントサイドノーズグラインド

・バックサイドオーリー

・フロントサイドクレイル

・バックサイドクレイルスライド

・フロントサイドスミスグラインド

・バックサイドリップスライド

・バックサイドキックフリップ

・バックサイドノーズグラインド

・フロントサイドテールスライド

・バックサイド50-50グラインド

・バックサイド5-0グラインド

・フロントサイドノーズグラインド270アウト(リバート)

これまでもノーズグラインドからのリップスライド(ボードの真ん中でコースの縁を滑る)など、得意技の進化を続けてきた彼女の“今”が現れた結果となり、大接戦の中見事に銀メダルを獲得した。

【プレッシャーをはねのけ五輪2連覇へ始動・四十住さくら】

 

東京五輪の金メダリスト、四十住さくら選手は決勝1本目と2本目でフルメイク出来ず、8位(決勝最下位)から挑んだ3本目で見事にフルメイクのランを見せる。

以下、3本目のランでのトリック。

・フロントサイドスミスグラインド

・トランスファーからのフロントサイド50-50グラインド

・ファストプラント

・フロントサイドリップスライド

・バックサイドテールスライド

・フロントサイドオーリー

・ジュードーエア

・ヒールフリップインディ

・バックサイド50-50グラインド

・リーントゥテール

・フロントサイドブラント

・バックサイドエア

・バックサイド360オーリー

極度のプレッシャーから解放された安堵からか、滑走後のスカイ・ブラウンとのハグのシーンでは涙を浮かべる姿も。

土壇場まで追い込まれながらも、東京五輪金メダリストとしての意地を見せ、3位に輝いた。

【一糸乱れぬ540に注目・草木ひなの】

 

女子ではパーク強豪国となった日本の選手権を2連覇している草木ひなのは、準々決勝1位、準決勝2位で決勝に駒を進める。

草木選手のトリックで注目なのは、エアの高さはもちろんの事だが、その完成度にある。

優勝したスカイ・ブラウン選手のランを見るとわかるのだが、女子は通常540(空中で1回転半回る)などの大技を最後に持ってくる事が多いが、その理由は体勢が崩れやすく、次の技に持っていくのが難しくなる為。

しかし、草木選手はバックサイド540をラン中盤の4個目に持ってきている。

そして空中で540度回った後は一糸乱れぬ体勢で着地し、すぐに次の技へスタンスを移行出来ている事がわかる。

以下、ラン1本目でのトリック。

・フロントサイドスミスグラインド

・アーリーウープからのバックサイド360

・フロントサイド5-0グラインド

・バックサイド540

・バックサイドクレイルスライド

・バックサイドスミスグラインド

・サランラップ

・インディエア

・フロントサイド50-50グラインド

・インバート

・バックサイドロックンロールスライド

・サランラップテール

2本目と3本目ではアーリーウープからのサランラップ(レギュラースタンスの場合、右手で板の先端を掴み、板を前足の下に回すようにして通し、板の先端を左手で持ち変える技)、キックフリップインディを加え、さらに難易度を上げたランで挑むも、残念ながらキックフリップインディを決めきる事が出来なかったが、その技の高さと完成度に世界が驚いた事は間違いない。

見た目とは裏腹の、日本のスケーター達から呼ばれている“鬼姫”の異名は伊達じゃない。

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