オリンピックでつながる、韓国と寒河江の知られざる関係(後編)
2018.08.12
開催まで2年を切り、徐々に準備が進んでいる2020年の東京オリンピック。スケートボードに関しても追加種目決定からおよそ2年が経過。前篇では山形の寒河江市と韓国ローラースポーツ連盟がホストタウン盟約についてお届けしたが、後編ではホストタウン盟約を結んだ韓国ナショナルチームについて掘り下げていきたい。
韓国ナショナルチームの活動
前篇で述べたように、日本と積極的な交流を図っている韓国ナショナルチームだが、隣国でありながらも彼らについて多くを知る人は少ない。そこで、ホストタウンである寒河江市との交流を含めチーム強化のために6月末に来日した彼らの活動を紹介しよう。
韓国ナショナルチームが来日した際、毎回行っているのがコンテストに出場することと、有名スケートパークやショップへ足を運ぶことだ。韓国にもれっきとしたシーンがあり、国際的なスキルを持つスケーターもいるのだが、堀米雄斗を筆頭に近年の日本人スケーターの国際コンテストでの活躍は当然韓国にも知れ渡っており、それに次ぐスケーターが各地にひしめいているのもASIAN OPENなどを通して既に感じ取っている。韓国側からすれば、ライダーの層やスケートパークなどの施設面はまだまだ日本には及ばないと感じているのだろう。そこで全国規模のコンテストに出場したり、国内トップライダーが集まるパークや有名ショップへ足を運び、彼らとセッションしたり情報交換を行うことが新たな刺激となり、それを国内へ還元することがシーンの発展へとつながると考えているとのこと。既出のASIAN OPENがKRSF(韓国ローラースポーツ連盟 )の主催となったのも、そう言った韓国側の意向が反映された結果だと言える。
そのような動きもあってか、韓国ライダーのスキルはここ数年で劇的な成長を見せている。
今回来日した成長著しいライダー陣の顔ぶれを、彼らのコメントとともに見ていこう。
突如現れたシンデレラボーイ。ユ・ジウン(유지웅)
ユ・ジウンです。今回はこの来日権利をかけた国家代表選抜のコンテストに2位になり、来ることができました。この結果は自分も予想していなかったので驚きましたが、せっかくのチャンスを頂いたたので、こうしてこの場にいることが嬉しいです。
日本はAJSAが開催されたSKIP FACTORYなど、施設や環境がとても充実してますね。ただ、今までは映像で見ただけだったので面白そうだなと思っていましたが、実際にやってみたら難しかった。
来る前の、楽しそう! あのパークで滑りたい!! という気持ちよりも難しなという印象の方が強かったです。それでも日本の十代のスケーター達はのバシバシメイクしていました。噂には聞いていましたが、実際に見てスキルの高さに驚きました。中でも佐川涼がヤバいと思います。スイッチでハバやレールから回しまでこなします。あれはクレイジーです。笑
今回のトリップは寒河江のイベントが一番思い出深いです。デモをしたのも初めてだったし、日本のトップライダーと一緒に滑ることができたのも楽しかったです。今後の予定は正直に言うと分かりません。まだまだ自分に実力が足りないのは自覚しています。だから今回の経験を生かして今後も目標を持って練習するのみですね。
来日経験も豊富なイ・ドンゴン(이동건)
イ・ドンゴンです。スポンサーのHEAPS Skateboardsとか、個人的なのも合わせて6回くらいは来ています。今回は国家代表選抜戦で3位になったから来れました。
もうこれだけ来ると、初めて来た時よりも日本人の知り合いもできるし、楽しみが増えるのでいい感じですね。渡辺雄斗はホーミーです。あと名前まではわからないんですが、来るたびに毎回会うスケーターもいるので自然と顔見知りになります。あとはASIAN OPENに来てくれたライダーや、自分が日本のコンテストで会ったライダーとはinstagramで相互フォローして交流しています。でも日本人は英語も話せない人が多いし、言葉の壁があってコミュニケーションがうまくとれないのはもどかしいですね。それでも今回は寒河江スケートボードフェスティバルで星野玄翔や日本のライダーたちと一緒にイベントに参加して、仲良くなれたからよかったです。
日本は韓国よりも施設も含めてスケートボードの環境が良いから羨ましいですね。上手いスケーターも多いと思います。特に池 慧野巨がヤバいですね。スムースなスタイルが他とは全然違います。
そういうライダーを見てると、僕の現在のスキルではまだオリンピックを目指すとは言えませんが、挑戦はしたいです。まだ時間があるのでこれからも一生懸命練習あるのみです。まずは韓国に帰って国家代表訓練プログラムがあるから、コンディションを整えて望みたいと思っています。
韓国期待の星、ウン・ジュオン(ン은주원)
ウン・ジュオンです。日本には5回くらい来ていて、ここ最近は毎年来ています。今回は国家選抜線で優勝したので来ることができました。
来る前はinstagramなどのSNSを通して日本のパークを見ていて、ずっといいなと思っていましたが、実際に行っても全てが楽しかったです。日本以外にもにもアメリカ、マレーシア、中国はスケートボードで行きましたが、世界の中心であるアメリカを除けば、その次は日本が一番環境が良いと思います。アジアでは間違いなく日本がNo.1ですね。
まず室内パークがあるのが凄いと思います。雨が降ってもできる環境があるのは本当に素晴らしいです。
あとは日本のストリートをプッシュしていると、同じアスファルトでも日本の路面はツルッとしていてスムーズだなと思いますね。もちろん全てではないですけど、韓国にはそういう路面はないのでプッシュをしていても気持ちいいところが多かったです。
それと今回の日本滞在の思い出は、やっぱり新宿のストリート撮影ですね。スポット天国だとは聞いていたんですが、今まで数多くのビデオで見てきたスポットがたくさんあったのにはアガりました。終電前の撮影だったので、セキュリティも多くて難しかったんですが、とにかくすごく興奮していました。やはり海外の有名スポットで滑るのは、パークとは全く違った面白さがあります。
今の目標はタンパで勝つ事です。そのためにまず、名前が知られる順位のところまでいきたいと思っています。そうしていつかはStreet Leagueに出たいと思ってますし、その機会を常に探しています。そのためにスケートボードをしていると言っても過言ではありません。
まずは近いうちにインドネシアでアジア競技大会があるので、それに向けて準備したいこうと思っています。
ライダーを経て監督へ。キム・ヨンミン(김영민)
以上が今回来日した韓国ナショナルチームのライダー達の顔ぶれだ。
国を挙げてチーム強化に取り組んでいるだけに、彼らがこれから国際舞台で活躍する可能性も大いにあり得る。
では、最後にチームを仕切る監督のコメントをご覧いただきたい。
こんにちは。私はジャカルタで開催されるアジア競技大会に向けてチーム強化を担うこととなった監督のキム・ヨンミンです。
今回のライダー陣はコンテストを経て来日選手を決めましたが、監督にも同じような審査がありました。KRSFは大韓体育連盟傘下の組織になるのですが、そこの委員会が監督の募集をかけていて、書類審査や面接もありました。多くの人物が集まってきたのですが、私には韓国国内のコンテストで実績があったので、こうして監督になれたのだと思っています。
今回のトリップは寒河江市から招待を受けての来日となるのですが、それだけでなくAJSAのコンテストに出たり、ライダー達に経験を積ませて訓練をするのが一番の目的です。
と言うのも、東京オリンピックでは日本は開催国での出場枠があると思いますが、僕たちはアジアの中で出場枠をとらなければならないからです。もちろん日本との実力差があるのは理解していますが、それでもどうにかして出場権は取ろうと思っています。とはいえ、現時点ではその内訳や仕組みがはっきりしていないので、まずは前哨戦とも言える今回のアジア競技大会でに向けて強化を図っているところです。
今のところ、アジアで韓国がオリンピックの出場枠を得るためにライバルとなるのはインドネシアだと思っています。インドネシアには世界的なコンテストに出てるサンゴーというnew balance numericの若くて有望なライダーがいますからね。
でも、やはりアジアの中では日本の選手層が群を抜いています。上手なスケーターが本当に多いです。
自分たちが日本にくる理由として、そう言ったスケーター達と同じ場で滑ることで、彼らがどういう行動をしているかとか、どうやってメンタルやモチベーションをコントロールしているのかを、見て学んでほしいという思いがあるからです。
韓国ではAJSAのASIAN OPENを年に1回やっていますが、それで良い交流ができて、日本に来れないスケーターにも刺激を与えることができて、子供や女の子のスケーターも増えました。
それに少し前までは世界で活躍する日本人を見ても、上手いし、自分たちよりも上の人だと思っていたのが、最近では実力の差は感じていても、同じフィールドで滑ったりSNSで交流したりすることで、存在が近くなったと感じています。そういったマインドや気持ちが韓国人も変わってきているのを実感しています。韓国のシーンはこれからもっと良くなっていくと思います。同じアジア人として日本と韓国で一緒に上がっていけたら最高ですね!
以上が韓国ナショナルチームの顔ぶれとコメントである。
現状はまだまだ発展途上ではあるが、今年のASIAN OPENで決勝進出を果たしたイム・ヒョンソンやチェ・ユジンを始め、今回は来日とはならなかった若手達も大きな可能性を秘めている。
世界でも、このように東京オリンピックを見据えたナショナルチーム編成が各地で進んでいることだろう。
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