【JAPAN STREET LEAGUE 2024-BORDERLESS Session-】シーズン初戦を制したのは佐々木音憧「今後目指す人と目標は〜」
2024.04.16
4月14日に東静岡アート&スポーツヒロバで開催されたJAPAN STREET LEAGUE(ジャパンストリートリーグ、以下JSL)開幕戦で佐々木音憧(トア)が優勝。
池慧野巨(イケケヤキ)が準優勝、渡邊星那(セナ)が3位でそれぞれ表彰台入りした。
スケートボード界最高峰の大会となるStreet League Skateboarding(ストリートリーグ以下SLS)の世界観を日本で再現するべく開催されているJAPAN STREET LEAGUE(ジャパンストリートリーグ、以下JSL)は今年で3年目となり、昨年は根附海龍がJSLからSLSシドニー大会セレクトシリーズ(2023年10月)出場の切符を手にし、見事決勝まで駒を進める快進撃を見せ、その後ブラジルで開催されたスーパークラウンにも出場(2023年12月)を果たした。
日本最高峰のコンテストイベントとして迎えたJSLシーズン3の新たな挑戦は“BORDERLESS”。
男女で分けるのではなく、女子選手も男子に交じってセッションするという形式で日本屈指のガールズスケーターたちが大会に華を添え、今年3月にドバイで行われたパリオリンピック選考試合となる大会(World Skateboard Tour以下WST)で初出場ながら4位に入賞した松本雪聖(今大会最年少出場12歳)が特別賞を受賞した。
今大会は現在パリオリンピックランキング10位、日本勢では5番手につけ、5月に上海で行われるパリオリンピック予選フェーズ2への進出を決めた(各国最大6人まで)佐々木音憧や、先日TBSテレビで放送されたスケボー番組「KASSO」でもインパクトを残した浦野建隼、台湾の英雄的スケーターでもあるアディー・ルーなどの出場が注目を集めた。
次回の開催は9月29日に埼玉県所沢市に位置するSKIP FACTORYにて、今期最終戦の開催が予定されている。
※今年はオリンピックイヤーのためJSLは全2戦。
決勝の模様はこちらのFODからしばらくの間は無料で見ることが出来ます
https://fod.fujitv.co.jp/title/70ql/70ql110002/
【– BORDERLESS Session –出場選手とルール】
出場選手
浦野建隼(20) /浦野晴(19)/佐々木音憧(17)/齋藤丈太郎(18)/齋藤吟平(15)/池慧野巨(22)/ADee Lu(アディー・ルー37)/藪下桃平(14)/葛西民央(16)/田渕利來(15)/酒井琥珀(17)/八島璃央(14)/渡邊星那(17)/瀧永遥句(15)/甲斐穂澄(16)/高橋陽太(18)/安部来夢(17)/和田陽翔(16)/北野朝戸(16)/高橋月音(16)/松本雪聖(12)/杉本二湖(15)/中島野々花(14)/藤澤虹々可(22)
JSL2024の決勝のルールはSLSと同じルールで、基本的には以下のとおり。
●45秒間自由にコース内を滑走するランを2本と、コース内の自由なセクションで1発技を行うベストトリックを5本行い、最終的にランとベストトリック上位4本の合計得点で順位が争われる(1トライにつき100点満点で採点)。
※ランのスコアは最大でも1つのみのカウント&必ず採用されるわけではないので、ランを2本ともミスしたとしても、ベストトリックで高得点を4本取れば逆転が可能。
※ちなみにストリートリーグではランで行ったトリックを同一の場所で行ってはならないが、パリオリンピックではOKとなっている。
【圧倒的な実力で優勝し50万円!佐々木音憧】
予選を全選手で唯一の80点台となる滑りを見せ、1位で決勝に進んだ佐々木音憧。
決勝のランでは残念ながらフルメイクのランを見せることはできなかったが、東静岡アート&スポーツヒロバスケートパークの巨大セクションで佐々木ならではの適応力を見せる。
このスケートパークの特徴は何と言っても、センターに位置する巨大なダブルセットのハンドレールとハバレッジ。
ベストトリックでは決勝進出者8人のうち、3本揃えられたのは佐々木と池の2人だけだった。
佐々木音憧/ランで見せたバックサイド360
ラン2本目に78.60点を獲得し、渡邊星那(ラン79.67点)に続いて2位でベストトリックに臨んだ佐々木。
多くの選手がベストトリックをミスしていく中、1本目にノーリーフロントサイド180スイッチフロントサイドスミスグラインド リバートを決め83.20点を獲得。
2本目にはノーリーフロントサイド180ノーズグラインド リバートを狙うもミス。
3本目にはこの技をしっかり決め、87.27点を獲得し、暫定1位に躍り出る。
4本目にはキャバレリアルバックサイドノーズブラントスライド フェイキーを決め89.50点を獲得。
佐々木音憧/ノーリーフロントサイド180ノーズグラインド
優勝が確定した5本目のウィニングランでは、ノーリーヒールフリップフロントサイドブラントスライドを狙うも失敗に終わったが、結果的には2位に10点差以上をつけての大勝となった。
今大会唯一、パリオリンピック予選大会となるWSTのフェーズ2へ進んでいる選手として、圧倒的な実力を見せての優勝劇を飾ってくれた。
【他に類を見ないトリックセンス/池慧野巨】
池慧野巨/フロントサイド50-50 トランスファーバックサイド50-50
10代の若手が台頭する中、予選を6位で決勝に進んだ唯一の20代となる池慧野巨。
決勝のランではフルメイクのランを見せることはできなかったが、フラットレールにフロントサイド50-50グラインドをかけてから、後ろのカーブにバックサイド50-50グラインドをかけるといった独創的なランを見せると、70.23点を獲得し全体6位でベストトリックに進むとそこで驚異的なトリック見せる。
池慧野巨/インポッシブル50-50グラインド
ベストトリック1本目にはインポッシブルフロントサイド50-50グラインドを決め、81.80点を獲得。
MCからも思わずブレイデン・ホーバン(アメリカの若手インポシマスター)という名が飛び出るほどのトリックチョイスで一気に大会をリードする。
池慧野巨/ハーフキャブサスキグラインド
2本目ではハーフキャブサスキグラインドを狙うもミス。
3本目でこれを完璧に決め、85.67点を獲得し順調に順位を上げていく。
4本目ではさらに難易度を上げたノーリービッグスピン バックサイドテールスライドを決めてこの日唯一の90点台となる90.23点を獲得し一気に優勝争いに食い込む。
迎えた最終5本目では、81点代が出れば逆転優勝も狙えるシーンだったが、残念ながら失敗し準優勝で幕を終えた。
今大会のルールは最後まで逆転のチャンスがあり、見ている者にとっては最後まで目が離せない面白い大会となった。
【ウィザード・オブ・ヒールズ/渡邊星那】
渡邊星那/ランで見せたヒールフリップバックサイドノーズグラインド
予選を8位で通過した渡邊星那。
決勝のランでは他の優勝候補がフルメイクのランを見せられずにいる中、2本目のランでヒールフリップトリックを織り交ぜたフルメイクの滑りを見せ、暫定首位でベストトリックに臨む。
渡邊星那/バリアルヒールフリップ バックサイドリップスライド
1本目ではバリアルヒールフリップ バックサイドリップスライドをミス。
2本目にはこれを完璧に決め、84.23点を獲得。
3本目はバンクオーバーのフロントサイドヒールフリップを狙うがミス。
4本目はトリックを変えてヒールフリップフロントサイドリップスライドを決め、85.27点を獲得し、優勝争いを一歩リードする。
3位で迎えた最終5本目。
ここで89.4点以上を出せば優勝が見えるシーンで選んだトリックはヒールフリップフロントサイドブラントスライド。
これは惜しくも外してしまったが、見事3位で表彰台入りを果たした。
ちなみに4本得点を揃えられた選手は2位の池慧野巨までで、3位の渡邊星那以下の選手はベストトリックを3本以上決めることができなかった。
それだけ今大会の会場のレベルの高さと、上位選手が決めた技のレベルが高かったことが伺える大会となった。
【クレイジーガールズ賞/松本雪聖】
他の選手が苦戦するダブルセットの巨大ハンドレールとレッジや、ロングレールを攻略し、男子に勝るとも劣らない見事な滑りを見せた、松本雪聖が女子特別賞となるクレイジーガールズ賞を受賞。
松本雪聖/フロントサイドノーズグラインド
受賞インタビューで「これからも頑張るので応援してください」とコメント。
今後の活躍が最も期待されるスケーターの1人としてこれからもJSLの舞台で輝いてくれる姿が楽しみだ。
他にも今大会は各ヒートで女子選手が活躍。
中島野々花/バックサイドリップスライド
杉本二湖/フロントサイドフィーブルグラインド
藤澤虹々可/ポップショービット
まさにボーダーレスな大会となり、会場を盛り上げてくれた。
そして何と言っても今大会の注目選手の1人が台湾のアディー・ルー選手。
今大会では最年長37歳、台湾の英雄的なスケーターであるアディー・ルー選手がJSL映像審査に応募し、出場をしてくれた。
残念ながら予選で姿を消したが、女子選手同様に大会に新たな風を入れ会場を盛り上げていた姿にリスペクトを送りたい。
【佐々木音憧インタビュー“目指すべき人と今後の目標”】
現在パリオリンピックランキング10位、日本勢では5番手につける佐々木音憧。
5月から始まる、パリオリンピック予選大会フェーズ2(各国6人までしか進めない)へと準備を進める中、今大会に出場し圧倒的な滑りで見事優勝、スケーターの中には彼の所属するあのブランドや、あのボスの話なんかも気になるところではないだろうか。
それではここで佐々木選手の優勝インタビューをどうぞ。
――まずは優勝の感想をお願いします
「ランが良くなかったんですけど、ベストトリック乗れてよかったです」
――今日の自分の中でのベストトリックは?
「ノーリーフロントサイド180(ノーズグラインド)スイッチ5-0ですね。
自分の中だと90点行くかなと思いましたけど」
――兄の来夢や根附海龍が欠場でしたが、今回のメンツはいかがでしたか?
「ケヤキ君とか(いつもと)ちょっと違ったメンツがいて楽しかったですね」
――音憧にとってJSLはどんな大会?
「SLSと繋がったりしているんで、さらに一歩有名になれるという意味でもいい通過点の大会だと思います。
今、国内あんまり大会やっていないんで、国内ではトップの大会だと思います」
――賞金の50万円は何に使いますか?
「海外(アメリカ)に行くのに使いたいと思います」
――今サポートを受けているDisorder(ディスオーダー)はどんなチームですか?
「みんな仲良くて、面倒見がめっちゃいいんです。
結構気楽に接していけるんで、自分の個性が出せる場所ですね」
――ボスのナイジャ・ヒューストンてどんな人?
「普段の生活から(普通のスケーターとは)全然違くて、自分の目指すべき人って感じですね。
(ナイジャの)普段の生活はもう、食事管理から色々細かく記録していて、写メ撮って栄養士みたいな人に送ったりしてますね」
――WSTパリオリンピック予選もフェーズ2へと進みますが、残り2戦の意気込みはありますか?
「ここまでやってきたんで、あとは本気で狙っていくだけです。
上位3位以内には入りたいですね」
――(JSLに質問が戻って)今回初の女子との共催でしたが?
「女子でもレベルが高すぎて、もしかしたら負けるかもという感じだったので、結構新鮮で面白かったです」
——女子特別賞を受賞した松本雪聖選手の滑りはどうでしたか?
「(ハンドレールでの)キックフリップ50-50半端なかったです。だんだんレベル上がりすぎて、女子でもそんな技できるのか!?って感じで怖いですね(笑)」
――最後に9月に行われるJSL最終戦への意気込みもお願いします
「今まで(JSLの)最終戦で勝てたことがないので、次は勝ちたいです」
【– BORDERLESS Session –決勝リザルト】
1位・佐々木 音憧 -338.57(78.30/78.60/83.20/0.00/87.27/89.50/0.00)
2位・池 慧野巨 -327.93(57.60/70.23/81.80/0.00/85.67/90.23/0.00)
3位・渡邊 星那 -249.17(47.47/79.67/0.00/84.23/0.00/85.27/0.00)
4位・藪下 桃平 -233.96(62.13/63.23/84.10/0.00/0.00/86.63/0.00)
5位・齋藤 丈太郎 -157.37(73.90/68.57/0.00/0.00/0.00/0.00/83.47)
6位・瀧永 遥句 -152.54(76.67/58.07/0.00/75.87/0.00/0.00/0.00)
7位・田渕 利來 -148.04(69.87/67.57/0.00/78.17/0.00/0.00/0.00)
8位・安部 来夢 -70.23(70.23/63.13/0.00/0.00/0.00/0.00/0.00)
- ()内はスコア内訳
クレイジーガールズ賞・松本雪聖
写真 文・小嶋勝美
スケボー放送作家。