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  • 2018.11.28

コラム 本間章郎 第5回:パークを作るってカッケーす その4

夏はコンテストシーズンでバタバタとしてました。毎年秋になるとちょっと落ち着いてくるものなんですが、ここ数年はまったく落ち着かないどころか、所属している日本スケートボード協会のコンテストだけでなく、沢山の賞金が用意されたコンテストやショップやローカルの様々なコンテストなども開催されるので、今はもう真冬になるまでは全く落ち着かない状況です。

以前は5月にコンテストが始まって、10月の全日本選手権でシーズンが終了、なのでちょうど半年がシーズンインで残りの半分がオフシーズン。

しかしここ最近は12月くらいまではイベントが盛り沢山で2月には世界戦のスケジュールの一部が発表されるので、オフシーズンと言える時期が本当に短くなった実感があります。

 

ま、それはいいとして、今回は前回までの活動で実際にパークができそうだ、ってところくらいからの色々な流れをご参考にしてもらいたいと思います。

陳情や請願、署名や直談判という、パーク設立までのスタートアップを通して、皆さんは市役所と議会の役割や市長や知事の立場やスタンス、そして予算や用地の作り方やローカルネットワークの大切さ、などがお分かり頂けたかと思います。色々な場所で声をかけてくれる方が増えてきましたが、ある方は市長に直接パークの必要性を話したり、陳情や請願を通して議員さんとどう進めて行くのがいいか検討されたり、役所の人に場所や規模の説明を求められたり、など、動きに対する反応が見られるケースも増えてきました。

目標に向かって活動を続けていくと、予想外の展開があったり、新しい出会いがあったり、色々なことが起こります。反対に、どんなに一生懸命活動をしても、まったく新しい展開がなかったり、少しも前進できていない焦りや焦燥感を頂くこともあります。でもね、僕のモットーが「人生無駄なし」ってことだけではなく、動きには必ず反応があります。自分の時間軸とは違う場合も多いですが、皆さんの活動が全く無駄になることはありません。

パーク建設への近道とは・・・

なかなか本題にいけないのでグッと軌道修正していきましょう。陳情や請願などが議会で採択されて役所が対応をするタイミングになると、見えないところで色々な動きが始まります。まず、担当部署と担当者が決められるケースが多いですが、担当部署は公園緑地課だけじゃなく、生涯学習部だったり市民スポーツ課だったり、オリパラ対策室だったり、企画課だったり秘書室だったりまれに福祉課だったり防災課だったり街づくり課だったり、と特に公園を担当する部署でないケースもあります。それはなぜかわかりますか?

パークができる場所やそれを作る予算、完成後の運営管理をどうするか、など色々な理由で担当部署が決められるのです。なので「役所にパークを作ってもらおう!」ってネジ込んでも、担当部署のたらい回しになったり、いつまでもどこが責任を持つかが決まらずに着手してもらえない状況になりやすい。今回のコラムで皆さんお分かりかと思いますが、だから議会承認を先にするのが効率的なのです。

あなたはネットで調べた情報でスケートボードの全てがわかりましたか?

議会で承認されて担当部署が決まると、「スケートボードとはなにか」ってところから担当者が勉強します。ネットで調べ、隣接する自治体の状況や、地域の状況を精査します。また地元の愛好者やシーンの状況などをとにかくゼロから調べていきます。そこでスケートボーダー達に聞きたい。あなたはネットで調べた情報でスケートボードの全てがわかりましたか?

僕はNOです。どちらかと言うとネットで見つける情報よりは、自分が体験したこと、スポットでのワードオブマウス、先輩や上手い人のアドバイスやスタイル、などが一番参考になりました。

なので役所の人がいくら調べても、基本的に僕はそのローカルに適切なパークの規模や内容に責任を持てる担当者や担当部署にはならないと考えています。もちろん議会や役所の皆さんもそう思っているかと思います。

この時点ではまだパークを作るかどうか、必要なのかどうか、どうやって進めるのか、など全てが白紙の状況ですので、保守的な自治体ではなかなか前向きに進めてもらえないケースも出てきます。

また別のケースで、「もう議会承認を得てスケートパークを作る前提で」って取り組む自治体も出てきます。その場合は、どこにどれくらいのものをいくらくらいで作るのか、って具体的な調査に進んでいきます。でも、役所が自分達で精査することは時間もかかることなのでコストをかけて外注で調べてもらい、より具体的な案を出してもらおうとする流れも出てきます。

その場合は、担当部署や自治体と取引のあるいわゆる「建設コンサル」の業者に、どれくらいの広さでどれくらいのパークを作るといくらかかるか、ってところまでを依頼するケースが多いです。その時点ではもうどこの公園のどの部分にどれくらいの予算で、って段取りがついているケースもあれば、陳情書に立ち返り、地元愛好者の意見を聞いて、ってケースもあります。

では「建設コンサル」って業者さんはどういう仕事をするか知っていますか?

大事なのは「地元愛好者の要望を取り入れたパークにしてください」ってこと

「建設コンサル」は入札で発注される場合もあれば、役所の内部のつながりから調査って名目で依頼されることもあります。建設コンサルは役所からの依頼を受けて、どんなパークをどれくらいのコストで作るのか、っていう段取りをつけるのが主な仕事です。ただコンサルさんもスケートボードのことは全く知りません。仕事として役所にパークの基本設計図を出して、その内容で建設する場合にどれくらいの資材でどれくらいのコストがかかるのか、って内容の実施図面を作成するケースが多いです。

最悪のケースから説明すると、コンサルさんが全国のパークの設置状況などを調べて適当にどこかの面積が近いパークを真似して「これがスケートパークです」って胸張って提出しちゃうケース。コンサルさんも役所もスケートボードのことを全く知らないので、どこかの利用者の多いパークを真似しちゃえばいいじゃん、的な安直な考え方で、資料や報告書はキッチリ作られちゃって進められるケースも少なからずあります。

なので、前回僕がご説明した陳情書には「勝手に決めて勝手に作るな」って意味合いの文章が入っています。大事なポイントはあくまで「地元愛好者の要望を取り入れたパークにしてください」ってことを前面に打ち出すことが大事です。そう打ち出して進められる場合は、必ず役所かコンサルさんから地元愛好者の代表に打診があります。打診の前に協会や有識者に相談されることもありますが、多くは陳情書を提出した方に「こういう内容のパークを考えてますがいかがですか?」と。

 

パブリックパークはシーンの動向や将来性も加味した上で決められるべき

ここがすっごく大事な瞬間です。ここから進路を誤るとかなりの確率で「とんでもパーク」になってしまいます。

地元の愛好者の代表が、キッズの親だったり、大人になって始めたスケート歴半年の方だったり、スケーターの友達を応援して代表になった方の場合など、自分の経験やシーン全体の需要、スキル別のセクション構成や今後のシーンの進化に対応できるか、など、パークの内容に関して自信や責任が得難いケースもあるかと思います。それは大きな問題ではなく、それなのに自分たちだけで進めてしまうことに問題があるのです。

さらに「遂にパークができる!」と有頂天になってしまい「作っていただけるならばある程度不満はあっても我慢します」って考えになってしまうケースがあります。これ非常に残念。この時点でもう先は見えています。何度も僕が言っている「全部自分達で決めないで有識者を必ず入れて検討すること」と言っているのはこの状況を避けるためなのです。

 

パブリックパークは皆さんから集められた税金を使って地域の愛好者のために作るパークなので、できる限り公益を考慮し、シーンの動向や将来性も加味した上で決められるべきで、一部の愛好者や特定の個人の好みに合わせて作られるべきではありません。役所もコンサルも地元愛好者も自信のない状態で進めても良いパークはできません。

またスケートボーダー達の好みやスタイルは実に様々で広範囲に渡るので、それを外部から判断し、全体の状況を見て検討することができる有識者の存在なしにパブリックパークの成功は難しい。誰かがコストを負担し誰かの場所に作るパークであるならば、好きなパークを作ればいいのです。6mのバートでも、30cmのミニランプでも、10mのハンドレールでも、本当に好きなものを作ればいい。でもパブリックパークは違うのです、ってことをここで改めてお伝えしたいと思います。

 

どんな立派なパークを作っても、利用する人がいなければただの無駄使い

コンサルさんや役所担当者との対応が始まるタイミングでは、必ず有識者に参加してもらうようにした方がいい、ってことはご理解頂けたかと思いますが、身近にそういう方が居ない場合は僕が所属する日本スケートボード協会などが対応してくれますし、他にもいくつかの手段があります。有識者の資質に関しては、まずローカルの意見を一番大事にしてくれるかどうか、って点をチェックしてみるといいでしょう。

ただどんな立派なパークを作っても、利用する人がいなければただの無駄使いになってしまう。なので、素材や設計だけでなく、ルール作りや運営管理、他競技との共存や役所の中の位置づけやサスティナビリティも配慮して進めて行くことが重要です。パークは作って終わりではありません。完成した後がスタートなのです。ここはこれから活動をして行こうと思っている人も良くご理解頂きたい点であります。

 

今回は建設コンサルって新しい配役が登場しましたが、ケースによってはコンサルもオリンピック会場のように入札で選ばれることもあるし、役所の大規模公園開発なんかの一部に入る場合はそこを担当する大きなコンサルさんに含まれるケースもあります。

とにかく同じ「パブリックパーク」であっても、そのスタートや進捗に関してはひとつの決まった形がある訳ではなく、その場所その場所で色々なケースがあることをご理解下さい。なので「こうすれば必ずパークができます」って方法がある訳でもなく、「こうすると良いパークができる」という絶対的な方法がある訳ではありません。僕は現在ご協力させてもらっている案件で実に素敵なコンサルさんに出会えました。地元愛好者の意見を最大限に取り入れて頂き、役所との仲介役になってアンジュレーションのつけ方やビジュアルに関しても実に魅力的なご提案を頂き、次のステップにどう向かっていくのがベターか、というアドバイスをしてくれ、その後に控えているステップに関しても色々と相談に乗ってくれる。そういうこともあるのです。いいことも悪いことも起こる可能性があるのです。できるだけ事前に予測して落とし穴を避けることで素敵なパークを作ってもらうこと、がこのコラムを通してこうやって皆さんにお伝えしている目的でもあるのです。

 

次回からは実際に場所が決まり、予算もざっくりと見え、どうやってパークを具現化していくのか、ってことを少しご説明できればと思います。

  • TEXT BY

    本間 章郎

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