【JAPAN STREET LEAGUE 2023-SUPREME DANCE-】最終戦で大まくりの対応力を見せた浦野建隼が初優勝「賞金でソファー買います」

2023.12.05

 

スケートボードの世界では知らない人はいないというほど、世界中のスケーター達に影響を与え、コンテストシーンの最前線を走るStreet League Skateboarding(ストリートリーグ以下SLS)。

そのSLS年間チャンピオンを決める、スーパークラウンが開催されているブラジルの裏側の日本でその世界観を目指し、日本のスケートボードを世界へアピールするために開催されている国内大会、JAPAN STREET LEAGUE(ジャパンストリートリーグ、以下JSL2023年シーズンの最終戦となる-SUPREME DANCE-がスーパークラウンと同じ日となる123日、埼玉県所沢市にあるスケートパークSKIP FACTORYで開催され、浦野建隼(けんと)が優勝。

浦野は今シーズン出場した全ての大会で表彰台入りしたが、最終戦で見事に初優勝を飾った。

JSLは今年第2戦優勝者10月に行われたストリートリーグ(以下SLS)シドニー大会セレクトシリーズへ出場できる権利を獲得し、根附海龍が出場。

セレクトシリーズとノックアウトラウンドを勝ち進み、決勝進出を果たしている(6位)。

そして現在もSLS側との交渉は続いており、今後もJSLからSLS出場への可能性があるとのことで、こちらも今後の展開を楽しみにしてほしい。

今大会の準優勝は、9月にパリオリンピック予選ローザンヌ大会で2位の佐々木音憧(とあ)3位は大阪出身の山附明夢(やまづきあいむ)となった。

 

決勝の模様はこちらのFODからしばらくの間は無料で見ることが出来ます

https://fod.fujitv.co.jp/title/90lf/90lf110002/

 

JSL2023これまでの結果】

 

 

JSL2023年シーズン、過去の結果は以下の通り。

1戦(ムラサキパーク東京)は佐々木音憧が優勝。根附海龍が2位、浦野建隼が3位。

2戦(SKIP FACTORY)は根附海龍が優勝。佐々木音憧が2位、藪下桃平が3位。

3戦(DELIC SKATEPARK)は佐々木音憧が優勝。浦野建隼が2位、山附明夢が3位。

以上となっており、いずれも海外コンテストを中心に活躍する日本屈指のスケーター達が上位を占めている。

 

– SUPREME DANCE –出場選手とルール】

 

 

出場選手

齋藤丈太郎(17歳) / 山附明夢(18歳) / 西山奏(16歳) / 佐々木音憧(16歳) / 村上涼夏(18歳) / 浦野建隼(20歳) / 齋藤吟平(14歳) / 浦野晴(18歳) / 柿谷斗輝(21歳) / 張爾洙(ジャン・イス 13歳)

 

JSL2023のルールは2024年パリオリンピック(予選を含む)のルールと同じで、基本的には以下になる。

・コース内を自由に滑走する45秒のランを2本と1発技のベストトリックを5本行い、3つのトップスコアで順位を競う。

・この内、ランのベストスコア1本とベストトリックの上位2本の合計が総得点となり、それぞれ100点満点で、小数点以下2点まで(最高得点は300.00)

同点選手がいた場合はランの最高得点で順位を決定し、それでも決着がつかない場合は、ベストトリックの最高得点をもって決着となる。

・選手は、より完成度の高いトリックのメイクを目指したい場合は、メイクしたトリックを破棄する権利がある(ベストトリックで同じトリックを行うと必然と得点が下がる為)

以上、ランのスコアが必須とならない本家のストリートリーグとはルールが異なる。

ストリートリーグはラン2本とベストトリックを5本行うこと自体は変わらないが、ランとベストトリック上位4本の合計得点で順位が争われる(ランのスコアは最大でも1つのみのカウント)。

ちなみにストリートリーグではランで行ったトリックを同一の場所で行ってはならないが、パリオリンピックではOKとなっている。

一見わかりづらい違いに見えるが選手にとっては大きな違いとなる。

 

【これぞアメリカ仕込みの対応力!浦野建隼

 

 浦野建隼/ランで見せたビッグスピンフリップ

 

SKIP FACTORYでの大会自体が初めてという浦野建隼だったが、予選を2位で通過し決勝に進む。

決勝のランでは本人も得意トリックと話すビッグスピンフリップやインワードヒールフリップからのテールスライドなどをフルメイク。

長身かつ、長い手足から繰り出されるトリックにスタイルが加わったナイスなランで85.23点を獲得し、佐々木に次ぐ2位でベストトリックに臨む。

 

浦野建隼/キャバレリアルキックフリップ ボードスライド

 

ベストトリックでは1本目にバックサイド180キックフリップ ノーズグラインド(87.27点)、2本目にキャバレリアルキックフリップボードスライド(81.93点)を決め、暫定首位に立つと、4本目には得意のインワードヒールフリップからノーズスライドを決める(82.30)。

 

浦野建隼/インワードヒールフリップ バックサイドノーズスライド

 

「事前にどんなトリックをやるか全く決めていなかったけど、今日は調子が良かった」と話ていた言葉通り、ベストトリックは1本のミスだけで、回数を増すごとにトリックのレベルをあげていった。

4本目終了時点で、佐々木に逆転を許し迎えた最終5本目、サムライヘッドと名付けられたレッジにガンガンワックスを塗りたくった浦野が選んだトリックは、キックフリップバックサイドノーズブラントスライド。

 

浦野建隼/キックフリップ バックサイドノーズブラントスライド

なんとこの技、浦野自身レッジでトライするのが初めてだったにも関わらず、本番1発で決め、88.40点を獲得し首位奪還する。

初めて出場したスケートパークの大会で、初トライの技を決めきるこの対応力が、浦野建隼の最大の持ち味だと感じるシーンだった。

 

【ハンマートリッカー日本代表!佐々木音憧】

 

佐々木音憧/ランで見せたギャップ越えのフロントサイドノーズブラントスライド

 

圧倒的パワーとスピードで、オリンピック予選ローザンヌ大会で表彰台入り(2位)、JSLでも今季2勝をあげる輝かしい成績を残している佐々木音憧。

今大会でも予選をトップ通過、決勝のランでも88.97点を獲得し全体トップで無双の気配を漂わせつつベストトリックへ進む。

 

佐々木音憧/キャバレリアル バックサイドノーズブラントスライド

 

ベストトリック1本目には超高難度トリックであるはずのキャバレリアルバックサイドノーズブラントスライドを危なげなくメイク(85.47点)。

2本目にと3本目にはノーリーヒールフリップフロントサイドリップスライドにトライするものの、佐々木にはSKIP FACTORYのハンドレールが短すぎるのか、ハンドレールの切れ目ギリギリにデッキが乗ってしまいノーメイク。

4本目にはトリックをノーリーフロントサイド180スイッチスミスグラインド リバートに変更し、これを1発で仕留め(83.30点を獲得)一気に暫定1位に躍り出る。

 

佐々木音憧/ノーリーフロントサイド180 スイッチスミスグラインドリバート

 

ラストトリックとなる最終5本目、直前に浦野建隼がキックフリップ バックサイドノーズブラントスライドをサムライヘッドで決め、逆転を許してしまう。

86.46点以上を出せば、再逆転し優勝が決まるシーンで佐々木が選んだトリックはノーリーヒールフリップ フロントサイドノーズブラントスライド。

しかしやはり、佐々木の爆飛びノーリーヒールフリップで入るにはハンドレールが短すぎたのか、2本目3本目同様に飛び過ぎてしまい、デッキが乗った場所がレールの切れ目ギリギリで乗りきれず、悔しい準優勝となった。

2戦に続き、佐々木はSKIP FACTORYでの大会全てで2位の結果の結果となった。

 

佐々木音憧/飛び過ぎてメイクできなかったノーリーヒールフリップ フロントサイドノーズブラント

 

【デッキが足に吸い付いてきてるよね!?山附明夢

 

山附明夢/フェイキー5-0グラインド

 

予選を3位で通過した山附明夢はランでは他の選手とは違い、得意のカーブトリックを取り入れた構成で82.37を獲得。

日本一足にデッキが吸い付いている動きが出来る彼は最終戦でも、完璧すぎる動きで見る者を魅了した。

 

山附明夢/フロントサイド180スイッチKグラインド

 

ラン全体では3位でベストトリックに進むと1本目にフロントサイド180オーバースイッチKグラインド(79.07)と、ラストトリックには予選で決めきれなかったハンドレールオーバーのスイッチヒールフリップ(79.17)を決める。

いつも通り最後まで満面の笑顔で、誰よりも楽しむスケートを見せ、今シーズン2度目の表彰台に上がった。

 

山附明夢/スイッチヒールフリップ

 

【震えて待て「近々パート2つ出します」】

 

 

今年11月にストリートリーグの企画コンテストSLS RESURRECTIONのウィルシャー15というロサンゼルスにかつて存在した15段ステアのハンドレールを再現した大会に緊急参戦し、爪痕を残してきた浦野建隼。

JSLにも今年鳴り物入りで参戦すると、出場した大会は全て表彰台入りし、最終戦で優勝を飾った浦野のインタビューをどうぞ。

 

――まずは優勝の感想をお願いします

 

「優勝できるとは思ってなかったんですけど、今日は調子が良かったです。

ベストトリックの技もなにも決めてなかったんですけど、なんやかんや楽しかったですね。

JSL2戦のスキップファクトリー大会(7月)に出られなかったのもあって、スキップで開催される大会に出ること自体が初だったので、今回勝てて嬉しいです」

 

――今日の自分の中でのベストトリックは?

 

「最後のキックフリップノーズブラントです。

今までレッジでやったことなかったんですけど、レールみたいな感じでやればいけるかなと思ってワックスいっぱい塗って練習でトライしてみたらいけそうだったんで、本番でやったらいけましたね」

 

――事実上、決勝の最後に初メイク!?

 

「そうですね、本当に初メイク。

レールだったら得意技なんですけど、レッジとなると別なのでメイクできてよかったです。

最初レールでやろうと思ったんですけど、ランでやっちゃたんで、だったらレッジでやってみようと思いました」

 

――賞金30万円の使い道は?

 

「アメリカに行く資金にしたり、活動資金にしたいっていうのはあるけど、最近家具買うのにハマってて、良いソファーを買いたいです」

 

――30万円ピッタリの!?

 

30万円ピッタリは身の丈にあってないんで(笑)、10万円くらいの良いの買ってリラックスしたいですね」

 

――共に出場している弟(浦野晴)はどんな存在?

 

「弟は予選でミスっちゃったけど、2人で同じ大会に出られるのは楽しいですね、いつもSLパークで一緒に滑ってるスケート仲間なんで」

 

――来シーズンの豊富を

 

JSLでは(今日みたいな)ニュートリックで観客を沸かせて楽しませたいですし、自分も楽しみたいです。

個人的な豊富だとパートですね。

来年2本出るんですけど、1つはサンディエゴの高校に行っていた時のスケート仲間達(Skate Juice)と撮った“Skate Juice 4”が来月発表されるんですけど、その映像のトップで出ます。

高校の時に撮ったやつなんで23年前の映像なんですけど、良いのが撮れてるんで楽しみにして下さい。

もう1本は最近アメリカに行った時に撮ったやつで、さらにこれから日本でも東京とか地元の静岡で撮って完成させた自分のソロパートを、サポートしてくれているブランドから出そうと思っています。

実は6年くらい前にパートは出したことがあるんですけど、それはだいぶ前なので、こっちはちゃんとした自分の初パートって感じで来年には出します」

 

アメリカ仕込みのスキルフルな動きを見せる浦野建隼の新パートが待ち遠しい

 

【これぞスケートボードJSL”

 

最後に賞金を獲得し大会を締めくくった謝花明徳

 

大会後はアフターパーティ&カーブセッションとなる裏JSLが開催された。

SKIP FACTORYの名物セクションでもある大理石のカーブを使い、選手もジャッジもスタッフもお客さんも入り乱れてのカーブ大会が開催され、良いトリックを決めたスケーターにはその場でご褒美も!

スケートボードはサッカーや野球などとは違い、プロもアマも1つのセクションをみんなで競い合って遊ぶという良さがある。

JSLにもそんなスケボー本来の姿があったように感じた。

ちなみに最後に最後にビッグトリックを決めて大会を締めくくったのは、JSLヘッドジャッジを務めた最強の負けず嫌い、謝花明徳。

そういうところもやっぱり面白い。

 

SUPREME DANCE 決勝リザルト】

 

1位・浦野 建隼 -260.9085.23/0.00/87.27/81.93/0.00/82.30/88.40

2位・佐々木 音憧 -257.7488.97/33.43/85.47/0.00/0.00/83.30/0.00

3位・山附 明夢 -240.6182.37/72.00/79.07/78.30/0.00/0.00/79.17

4位・ 爾洙 -153.9070.23/72.47/0.00/81.43/0.00/0.00/0.00

5位・齋藤 吟平 -150.7722.43/70.47/0.00/0.00/80.30/0.00/0.00

()内はスコア内訳

 

写真 文・小嶋勝美

スケボー放送作家。

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